この記事は、2025年3月22日の日経新聞を基に作成しました。
2025年3月22日付の日本経済新聞によると、政府はカスタマーハラスメント(カスハラ)防止に関する法改正案を閣議決定しました。
法改正へ向けた政府の動き
新たなルールでは、企業に対し以下のような対応を義務づける内容が盛り込まれています。
- カスハラへの対応方針の明示
- 社内相談窓口の設置
- 通報後の適切な対応体制の構築
法律は公布から1年半以内に施行予定とされ、今後は国会での審議を経て正式に成立する見込み。
カスハラの実態と背景
厚生労働省の調査(2024年)によれば、全業種の約28%の企業がカスハラ相談を受けた経験ありと回答。
とくに、サービス業・医療・小売など、対人接点が日常的にある業種での深刻な影響が報告されています。
企業への今後の影響
今回の法改正により、企業には従業員を過度な顧客要求から守る対応体制の整備が求められる。
管理職研修、ガイドライン整備、相談体制の強化などが実務上の課題として挙がっている。
一方で、正当なクレームとカスハラの線引きや対応判断の属人化防止など、ルール設計の複雑さにも注目が集まる。
Bay3からの視点(補足)
Bay3では、以下のような観点から「従業員が安心して働ける環境づくり」を支援しています。
- 組織全体での方針明文化
- 対応判断に迷わないマニュアル設計
- 管理職への対応トレーニング
- 定期的なケーススタディの共有体制
業種別】カスハラリスクと備えるべき対策ポイント
医療・介護業界
リスク特性:
- 高齢者・患者からの理不尽な要求
- 命を預かる緊張感の中での感情的反応
対策ポイント:
- 医療行為に関する説明責任の基準整備
- スタッフを守る「患者対応プロトコル」の明文化
- 家族からのハラスメントも含めたケース検討
飲食・小売業界
リスク特性:
- クレーム慣れ文化による“言われ損”構造
- SNS投稿リスクによる現場の緊張感
対策ポイント:
- 接客時の対応ルールと「断り方」の共有
- 現場判断に迷わない「即時対応フロー」整備
- 投稿リスクに対する広報と連携した危機管理体制
不動産・住宅業界
リスク特性:
- 高額契約をめぐる強い感情的反応
- 法的トラブルとの境界線があいまい
対策ポイント:
- 契約トラブルに備えた「説明履歴」「記録管理」の強化
- 顧客とのやり取りに関する「記録と共有」の仕組み化
- 管理職が判断するタイミングの明確化
BtoB業界・IT・製造など
リスク特性:
- 法人相手でも、担当者個人への過度な圧力・要求
- メール・オンラインでの文書ハラスメント(言葉の圧力)
対策ポイント:
- 書面・メールのトーン管理ルール整備
- 契約上の範囲を超える要求に対する断り文例の共有
- 対応履歴の「残す文化」の徹底
今後に向けた備え
カスハラ防止法の施行を見据え、企業は「一人で対応を抱え込まない組織体制づくり」が不可欠。組織全体で「判断できる構造」を備えることで、従業員の安心感と継続的な人材確保につながると考えられます。
出典
- 日本経済新聞(2025年3月22日 社説)
- 厚生労働省「職場のハラスメント実態調査」(2024年)