横浜の社労士法人が挑んだ“意識改革”の3年計画
1. 導入:「仕事は待っていれば来る」─その空気が成長を止めていた
山口県にある社労士法人みらい総研(仮称)。
顧問先は300社を超え、地域では知名度のある事務所です。新規の問い合わせも紹介中心に安定しており、表面的には“順調”に見える環境でした。
しかしながら、所長の山口氏(仮称)はこう語ります。
「新しい案件が来ても、“誰がやるか”で空気が重くなる。
待っていれば仕事は入ってくる─そんな姿勢が染みついていて、前に進む動きが起きないんです。」
2. 計画は「見える化」のためのツール
所長一人が頑張っても、現場が動かなければ組織は変わりません。
そこで、山口所長は「誰が・いつ・何をすべきか」を明文化し、職員と共有できる仕組みをつくるために、中期経営計画の導入を決めました。
「頭では“変わらなきゃ”と思っていても、見える形にしなければ変わらない。
だからこそ、“言葉と行動の地図”が必要だったんです。」
3. 社員のための“使える計画”をめざして
計画づくりは、経営者の思考整理だけでなく、「現場に届く内容か?」が重視されました。
そのため、職員を巻き込んだ設計が行われました。
- スタッフ全員で「仕事の価値」について意見を出し合うワークショップを実施
- 「待ちの姿勢」と「提案型の動き方」の違いを可視化して言語化
- 計画の1ページ目に“社員へのメッセージ”を掲載して共通言語化
こうして、計画が“経営側の資料”から“現場が使う道具”へと変化していったのです。
4. KPIは“数字”ではなく“行動”から始める
一般的に、KPIというと売上や件数などの数値を思い浮かべがちですが、
この事務所ではあえて“行動”に着目して指標を設計しました。
項目 | 現状 | 3年後目標 | KPI・行動内容 |
---|---|---|---|
新規案件の初動対応率(No.1職員以外) | 15% | 60% | 新規案件は全員ローテで初回ヒアリング実施 |
営業同行回数 | 年数回 | 年24回 | 月2回、職員が所長に同行して提案練習 |
顧客満足ヒアリング実施率 | 10%未満 | 80% | 職員ごとの担当制でヒアリングを実施 |
このように、行動ベースのKPIが、日々の変化を促す仕組みとなりました。
5. 営業を“特別”から“日常”へ──行動の積み重ねが意識を変える
営業活動を一部の職員だけに任せないよう、行動内容を可視化し、仕組みとして定着させる取り組みが行われました。
たとえば以下のような実践です:
- 毎週の定例ミーティングで「新しい相談案件」を共有
- 各職員の提案行動を業務ログとして記録し、週次でレビュー
- 所長が「どの行動が成果につながったか」を整理して、行動指針の共通理解を深める場を設けた
職員の声:
「“営業って特別なスキル”と思っていたけど、行動を分解して取り組めるようになってから、動きやすくなりました。」
このように、称賛や感謝の共有に偏らず、“再現可能な行動”を共通言語化したことが、営業意識の定着に繋がったのです。
6. 結果:組織全体が“前を向く”ようになった
取り組みから1年。組織には確かな変化が表れました。
- 新規案件の初動対応がチーム制に移行し、対応スピードが約1.5倍に向上
- 若手職員が「提案して感謝された経験」を持つようになり、仕事への意味づけが変化
- 所長の負荷が軽減され、全体の生産性も向上
つまり、“所長が頑張る組織”から、“全員が動く組織”への転換が始まったのです。
7. 所長の声:「“成果を出す動き”を、全員で理解できるようになった」
「“頑張っているように見える”だけでは、組織は変わりません。
中期計画があったからこそ、“どんな行動が成果につながるか”を示せた。
一人で営業していた時よりも、今の方が組織全体で成果を取りに行ける体制ができつつあります。」
8. まとめ:中期経営計画は“数字管理”ではなく“意識共有”の道具
- 計画は、社長が一人で考えるものではなく、組織全体で使う「共通言語」
- 行動の“意味”を共有することで、仕事に対する姿勢が変わる
- 特に、営業を苦手とする士業こそ、中計による“行動の見える化”が大きな力になります
本記事では、「待ちの営業」から脱却するための中期経営計画の活用事例をご紹介しました。
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