「スタッフのやる気が続かない」「教育してもすぐ辞めてしまう」——そんな悩みを抱える院長は少なくありません。
日々の診療に追われながら、モチベーション管理まで手が回らないのが現実ではないでしょうか。
本記事では、歯科スタッフの“やる気”と“定着”を両立させるための実践施策を紹介します。
感謝が伝わる仕組み、成長を実感できる教育設計、そして属人化しないモチベーションの仕組み化まで。
明日から現場で始められるノウハウを、具体例とともにわかりやすく解説します。
「頑張るスタッフが辞めない医院」をつくる第一歩、今日ここから始めましょう。
なぜ今、歯科医院に“モチベーション設計”が必要なのか

離職率の高さが経営リスクになっている現実
Point:スタッフの離職は「採用コスト」「教育ロス」「患者満足の低下」を同時に招く、最大級の経営リスクです。
Reason:歯科医院は少数精鋭。1人が抜けるだけで診療効率・予約枠・滅菌体制・受付対応まで連鎖的に影響します。さらに定着しない職場は口コミや紹介にも響き、売上のボラティリティが高まります。
Example:
- 退職1人あたりのコスト感(例):採用広告+面接工数+初期教育=数十万円規模
- 現場の実害:アポイントの取りこぼし/待合の緊張感上昇/新人教育のやり直しでリーダーが疲弊
- 悪循環:人手不足→教育不足→クレーム増→士気低下→さらに離職
Point:だからこそ、離職を未然に防ぐ「モチベーション設計」を経営の優先施策に位置づける必要があります。
スタッフの定着に悩む医院へ。こちらの記事では、仕組みづくりのステップを実例と共に解説しています。
給与だけではやる気が続かない理由
Point:給与は重要ですが、単独ではモチベーションは長続きしません。
Reason:外発的動機(給与・手当)は“慣れ”が早く、やる気のボトムを支える一方で天井を押し上げません。歯科の現場では「承認」「成長実感」「役割期待」といった内発的動機の設計が、日々の行動に効きます。
Example:
- 承認:ありがとうカード、患者さんの称賛をチームで共有
- 成長実感:トレーニングマップでできることが増える可視化
- 役割期待:チーム目標と個人KPIを接続し、任され感を演出
Point:給与×承認×成長×役割の“4点セット”で、やる気の底上げと持続性を同時に実現します。
モチベーション低下の裏にある“心理的安全性”の欠如
Point:本音を言えない職場では、ミスが隠れ、挑戦も生まれず、やる気は確実に下がります。
Reason:心理的安全性が低いと、スタッフは「叱られないための行動」に最適化します。報連相の遅れ、受け身、指示待ち——これらは能力ではなく“場の設計”の問題です。
Example:
- 日常の兆候:質問しづらい雰囲気/失敗を共有しない/雑談ゼロの休憩室
- 改善の打ち手:週1の“ありがとう共有ミーティング”、1on1面談の固定化、NGワード(人格否定・皮肉)ルール化
- 見える化:心理的安全性チェックリスト(発言率・相談件数・改善提案の数を月次で記録)
Point:安心して意見できる土台を作れば、承認も学びも循環し、モチベーションは自然と積み上がります。
心理的安全性を高め、スタッフが主体的に動ける職場づくりには仕組みの連動が欠かせません。
こちらの記事もあわせて読むと効果的です。
歯科スタッフのモチベーションを高める5つの施策【現場で実践できる】
歯科医院のモチベーション施策は、「理念」ではなく「仕組み」で動かす時代です。ここでは、すぐに現場で実践でき、スタッフの“やる気と定着”を両立させる5つの方法を紹介します。どれも小さな工夫から始められる内容なので、自院に合わせてアレンジしてみてください。
施策① 承認と感謝を仕組み化する「ありがとう文化」
「ありがとう」は最もシンプルで、最も効果的なモチベーション施策です。忙しい現場ほど、感謝が“心の中だけ”で終わりがち。だからこそ、仕組みとして見える形で感謝を伝える仕掛けが必要です。
感謝を言葉にする“ありがとうカード”
スタッフ同士で「ありがとう」を送り合うカード制度を導入しましょう。具体的な行動に対して感謝を伝えるのがポイントです。
- 「急患対応を代わってくれてありがとう」
- 「新人フォローが助かりました!」
掲示板に貼ったり、朝礼で共有したりすることで、チーム全体に“承認の連鎖”が広がります。
小さな成功を共有する“成果報告ミーティング”
週1回、診療後に「今週うまくいったこと」を共有する時間を設けましょう。
- 「患者さんに笑顔で感謝された」
- 「チーム連携で治療がスムーズに進んだ」
こうした“小さな成功”をみんなで言葉にすることが、自己効力感を高めます。
施策② 教育とモチベーションを連動させる「キャリア支援」
教育とモチベーションは切り離せません。スタッフが「成長を実感できる仕組み」があるだけで、離職率は大きく下がります。
トレーニングマップで“成長の見える化”
スタッフの習熟度を「見える化」するトレーニングマップを作りましょう。受付・アシスト・カウンセリングなどのスキルを段階別に整理し、できることが増えるたびにチェックを入れる仕組みです。進捗が見えると、自信と達成感が生まれます。
キャリアパス制度で“未来への期待”を生む
「この医院で自分はどう成長できるのか」を明示することが重要です。
- スタッフ → チーフ → マネージャー
- 新人 → 教育担当 → 副主任
ステップアップの道筋を明確にするだけで、将来への期待がモチベーションになります。
施策③ 信頼関係を深める「1on1面談・フィードバック設計」
面談は“評価の場”ではなく、“対話の場”です。信頼関係を育む1on1を仕組み化することで、スタッフの本音を引き出せます。
評価より“対話”を重視する面談スタイル
面談では「何ができていないか」ではなく、「何を感じているか」から始めましょう。
- 「最近どう?困っていることある?」
- 「前回より成長したと感じることは?」
感情ベースの質問をすることで、本音を引き出せます。
“承認→課題→アクション”の3ステップで動機づけ
- 承認(良かった点を伝える)
- 課題(改善点を共有)
- アクション(次の目標を決める)
「褒めて終わり」でも「叱って終わり」でもなく、“次に動ける会話”がポイントです。
スタッフの“やる気の仕組み化”に悩んでいませんか?
Bay3株式会社では、歯科医院に特化した評価×面談×教育の一体設計を支援しています。
「定着」「信頼」「成長」をつなぐ実行型コンサルで、現場が動く仕組みを一緒に作りましょう。
施策④ チーム全体でやる気を育てる「コミュニケーション設計」
モチベーションは個人の問題ではなく、“チームの空気”で決まります。
週1の“ありがとう共有ミーティング”でチーム力UP
週1回の短い時間で、「誰がどんな貢献をしたか」をチームで共有します。
- 「〇〇さんが器具準備を早くしてくれて助かった」
- 「新人の対応をフォローしてくれてありがとう」
承認を全員で見える化することで、互いの存在価値が高まります。
“心理的安全性チェックリスト”で関係性を見える化
月1回、「話しやすさ・信頼・助け合い」などを5段階で評価するチェックリストを導入しましょう。結果をチームで共有し、改善点を一緒に考えることが、組織の“空気改善”につながります。
施策⑤ 評価制度とモチベーションをつなげる「ハイブリッド評価」
「頑張っても評価されない」と感じると、どんな施策も意味を失います。評価制度こそ、モチベーションを支える土台です。
成果(定量)+行動(定性)の2軸評価
売上や患者対応数などの成果(定量)に加え、「チーム貢献」「改善提案」「後輩サポート」といった行動(定性)を評価項目に入れましょう。“結果だけでなく過程も見てくれている”という安心感がやる気を支えます。
“頑張りが報われる”基準を明文化する
「何をすれば評価されるのか」を見える形にすることが重要です。評価項目をスタッフと共有し、行動目標をすり合わせることで納得度が上がります。また、評価結果は“給与・昇給・キャリア”に連動させると、行動変化が加速します。
これら5つの施策を組み合わせることで、歯科医院のモチベーションは「属人的な声かけ」から「仕組みとして機能するサイクル」に変わります。
属人化しない!モチベーションを維持する仕組み化のコツ

モチベーション向上は、一度上げて終わりではありません。大切なのは、「一人の熱意に頼らない仕組み」をつくり、継続的にモチベーションを維持できる状態を作ることです。ここでは、属人化を防ぎながらチーム全体で“やる気を循環”させる3つのコツを紹介します。
面談・教育・評価を連動させた「モチベーションPDCA」
歯科医院でありがちなのが、「面談は面談」「評価は評価」「教育は教育」とバラバラに運用されているケースです。これではスタッフの行動が点で終わり、モチベーションが続きません。
モチベーションを維持するには、以下のサイクルを医院全体で設計することが重要です。
- 面談(Plan)→ 課題と目標を設定する
- 教育(Do)→ OJTや研修で行動を支援する
- 評価(Check)→ 成果と努力を見える化する
- フィードバック(Act)→ 次の行動計画に反映する
この流れを全スタッフで共有することで、「頑張りがきちんと次につながる」という実感を持てるようになります。つまり、モチベーションが“持続する構造”を作ることが大切です。
“月1回の承認ミーティング”でモチベーションを再起動
月1回、全スタッフが参加する“承認ミーティング”を実施するのも効果的です。このミーティングは「報告」ではなく、「称賛と共有」の場にするのがポイントです。
- 患者さんから感謝の言葉をもらったエピソード
- チームで工夫した改善事例
- 新人の成長ポイント
承認の言葉が飛び交う時間を定期的に作ることで、「見てもらえている」「自分の仕事に意味がある」と感じる機会が増えます。この“心理的報酬”が、給与以上にモチベーションを支えるエネルギーになります。
リーダー層を巻き込む「共育マネジメント」で院長の負担を減らす
モチベーション維持の仕組みを院長一人で抱えるのは現実的ではありません。重要なのは、リーダー層を“共育パートナー”として巻き込むことです。
- 面談の一部を分担する
- 教育進捗をフォローする
- チーム内の承認や連携を促進する
リーダーを中心にフォロー体制を築くことで、スタッフが安心して働ける環境が整います。さらに「リーダー育成」を並行して行うことで、組織全体のマネジメント力が底上げされます。
院長は“全員を見なくても、見られる仕組み”を作り、現場は“誰かが見てくれている”という安心感で動けるようになります。
モチベーション設計と組織改革を両立させたい院長には、こちらの記事がおすすめです。
歯科医院の成功事例|モチベーション施策で医院が変わった!
実際にモチベーション施策を導入した歯科医院では、離職率の改善やチームの一体感向上など、明確な成果が出ています。ここでは3つの成功事例を紹介します。
事例①:承認文化の導入で離職率15%→5%に改善
ある医院では、離職率の高さに悩んでいました。原因は「頑張っても認められない」こと。そこで、“ありがとうカード”と承認ミーティングを導入しました。
結果、スタッフ同士の感謝が増え、雰囲気が一変。「ありがとうを言われる機会が増えた」「前より話しやすくなった」といった声が多くなり、1年で離職率が15%→5%に改善しました。
事例②:キャリア支援制度でスタッフの定着率がUP
別の医院では、「教育してもすぐ辞める」が課題でした。そこで、キャリアパス制度とトレーニングマップを導入しました。
「次に何を目指せばいいか」が明確になったことで、スタッフの成長意欲が高まり、「続けたい」「もっとできるようになりたい」という前向きな声が増えました。結果、定着率が過去最高を記録し、院内の雰囲気も明るく変化しました。
事例③:1on1面談の仕組み化でチーム力が向上
3つ目の医院では、スタッフ同士のコミュニケーション不足が課題でした。院長が中心となって月1回の1on1面談を導入し、「承認→課題→次のアクション」をルール化しました。
スタッフは自分の意見を話しやすくなり、「聞いてもらえる環境」に変化。チームの信頼関係が深まり、患者対応のクオリティも向上しました。
まとめ|“やる気のある医院”が選ばれる時代へ

スタッフのやる気を維持できる医院は、患者にも選ばれます。モチベーション施策は“働く人の満足”を超えて、“医院全体の成長戦略”です。
モチベーション設計は「仕組み」でつくる時代
これからの医院運営では、「やる気を出させる」よりも「やる気が続く環境を設計する」ことが大切です。承認・教育・評価を連動させることで、モチベーションのPDCAが回り始めます。
信頼と承認がスタッフのやる気を生む
モチベーションの根底にあるのは、“信頼”と“承認”です。日々の小さな感謝や成功を見逃さず、声に出して伝えることが、最大のモチベーション施策になります。
まずは小さな“承認の仕掛け”から始めよう
大きな制度改革よりも、まずは「ありがとうを言葉にする」ことから始めましょう。1日1回の承認、週1回の感謝共有、それだけでも医院の空気は変わります。
やる気のあるスタッフが増えれば、医院の成長スピードも上がる。今日から始める“小さな承認の一歩”が、未来のチーム力をつくります。
Bay3株式会社は、現場が自走する医院づくりをサポートします。
承認・評価・キャリア支援を整え、辞めないチームへ。

