スズキはなぜ「国内100万台生産」を守るのか──人と現場を軸にした“経営2.0”の挑戦
2025年、スズキは故・鈴木修相談役の不在という大きな転機を迎え、新たな中期経営計画を発表しました。
その中で、国内生産を「鍛錬と蓄積の場」と位置づけ、年産100万台規模の維持を改めて明言。同時に、現場力・人材力の再構築に向けて、静かに、しかし着実に変化を進めています。
■ 国内生産をあえて残す理由とは?
スズキの世界生産の約6割以上を担うのはインド。グローバル競争の中では、より効率的な拠点への移管が進むのが自然とも思えます。
しかし鈴木俊宏社長は、日本国内の工場を「マザー工場」と定義し、こう語ります:
「現場を日本にしっかりと置いておくことで、技術・設計・商品・生産力すべての礎を築く」
つまり、現場こそが未来の技術を生む土壌であるという強い信念です。
■ 「からくり」と「デジタル」が共存するSSF(スズキ・スマートファクトリー)
中計の中核を担うのが「SSF(スズキ・スマートファクトリー)」構想。
IoTやAIによる工程の最適化、画像認識による品質管理などのスマート化だけでなく、古くからある**“からくり”改善活動**も重視しています。
例:アルミ鋳造時の高温作業を安全にする台車改善など
→ コストをかけず、現場の知恵と工夫で効率化・安全性を両立
これは、**「小・少・軽・短・美」**というスズキの原則に沿った、現場の再定義でもあります。
■ 経営2.0へ:指示待ちから「個磨き」へ
俊宏社長は、「修相談役の経営は素晴らしいが、属人化していた」と明言。
中計では、人事制度改革と組織文化の転換にも踏み込みました。
- 能力評価と業績評価を分離し、昇給・昇格の根拠を明確化
- 多様な人材(女性・高齢者)の育成と活躍の推進
- 部門間の“壁”を取り払い、「チームスズキ」として連携強化
経営の質=人材の質×現場の質
これを制度と文化の両輪で底上げしようとしているのが、今回の中計の本質です。
■ Bay3の視点:「守る」ことこそ、成長戦略になりうる
スズキの新中計は、「撤退」や「海外シフト」ではなく、あえて国内100万台生産を守るという選択をしています。
これこそが、**“自社の強みの再解釈”**です。
【Bay3式:強みを「再解釈」して中計に活かす3ステップ】
- 変わらないものを「捨てるべきでない価値」と定義しなおす
- そこに技術や制度、人材改革で“意味”を加える
- 仕組みとして仕上げ、次世代の成長軸へ昇華する
■ 最後に:チームで戦える会社は、強い。
「スズキは今が恵まれているからこそ、次の失敗が怖い」と語る俊宏社長。
この危機感が、「個の力」と「現場の底力」を磨く中期経営計画を生みました。
チームで未来に向かう会社こそ、変化に強く、そして強く愛され続ける企業です。
Bay3では、
中小企業向けに「現場とつながる中期経営計画づくり」支援を行っています。
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