人が辞めない医院をめざして─開業から描いた「3年後のありたい姿」
1. 導入:どんな医院か/どんな課題があったか
2024年春、福岡市郊外に開業した「つながる歯科クリニック(仮称)」。
院長の本多先生(仮:38歳)は、勤務医として10年以上の現場経験を積みました。
そして、「患者さんにもスタッフにも、信頼され続ける医院をつくりたい」という想いから独立を決意。
多くの開業医が集患や設備投資を優先する中で、本多先生は“人が辞めない組織づくり”に最初の一歩を踏み出しました。
つまり、目先の結果より“長く働ける職場の仕組み”を重視したのです。
2. なぜ中期経営計画に取り組んだのか?
「せっかく一緒に働くなら、“このチームで続けたい”と思える医院にしたかったんです」と語る本多先生。
そこで、開業準備段階から医院の理念を明文化し、組織としての方向性を明確にしました。
さらに、「3年後にどんな医院に成長していたいか」を共有する対話の場を設け、
スタッフが主体的に関われるよう、ビジョンをチームで言語化するプロセスを取り入れました。
その結果、医院全体に共通のゴールイメージが浸透していきました。
3. どのように計画を立てたか?(巻き込み方・工夫)
たとえば、開業前に1泊2日の「ビジョン共有合宿」を実施。
その場ではスタッフ一人ひとりが“3年後に実現したい医院像”を描き、意見を持ち寄りました。
一方で、経営方針の軸は院長が明確に示しており、「自由参加型」ではなく「共創型」のスタンスがポイントです。
KPIは業績だけでなく、「協働行動」や「定着率」にも焦点を当てて設計。
特に印象的だったのが、感謝と報連相の習慣化を目的とした日報記録の活用です。
具体的には、「1日3回以上、他者の貢献に触れる」ことをルール化し、コミュニケーションの質と量を可視化しました。
4. 中期計画の中身(ビジョン/KPI/行動)
項目 | 計画内容 |
---|---|
ビジョン | 地域で信頼される“貢献の見える”医院に |
KPI | 離職率ゼロ/紹介患者比率40%以上/日報内コミュニケーション 年間1000件 |
行動指針 | 朝礼で行動共有/月1回の改善ミーティング/行動フィードバック面談 |
このように、目標を「数字」だけでなく「関係性」にも置くことで、定着しやすく、行動につながりやすいモデルを実現しています。
5. 成果と変化(定性的・定量的に)
結果として、開業初年度に離職ゼロを達成しました。
また、感謝の共有と日報文化が根づいたことで、日々の報連相が自然に行われる職場へと変化しました。
さらに、紹介患者比率は半年で**46%**に達し、広告への依存度が減少しました。
ただし、紹介増と広告費削減との因果関係は慎重に見極める必要があります。
加えて、患者さんからは「なんとなく雰囲気がいい」といった声が多く寄せられています。
この雰囲気の裏側には、「ルールを守る文化」と「信頼を生む仕組み」が支えとして存在しています。
6. 担当者の声/今後の展望
「最初は“理念って必要?”という反応もありました。
しかし今では、“このチームで働けて本当によかった”とスタッフが言ってくれるのが、何よりの成果です。
今後も、“数字”と同じくらい、“人と人の信頼”を大切にした医院経営を続けていきたいです。」
7. まとめと学びポイント(他院への示唆)
- 開業初期こそ「理念と行動」の土台づくりが未来の差を生む
- KPIは業績だけでなく、協働・関係性の質を測る指標も含めることで、現場に浸透しやすくなる
- 感謝や報連相の見える化は、あらゆる業種で活用可能な“行動の習慣化手法”
本記事では、「人が辞めない医院づくり」の取り組みをご紹介しました。
もし貴院でも、評価制度やチームづくり、中期経営計画に関して感じていることがあれば、ぜひご意見をお寄せください。
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