親から会社は継いだ。でも、経営はまだ“親のまま”だった─家業から“組織経営”へ進化した中期計画の力
導入:「社長交代は済んだ。でも経営の中身は変わらなかった」
今回ご紹介するのは、創業60年を超える老舗製造業C社の事例です。
数年前に2代目社長へと交代は行われたものの、実際の経営には“先代の影”が色濃く残っていました。
たとえば――
- 社内の意思決定は「先代に確認」が定番
- ビジョンがなく、“目の前の仕事”に追われる日々
- 社員も「どう変わるのかわからない」という不安を抱えたまま
そこで、2代目社長が踏み切ったのが「中期経営計画」の導入でした。
中期経営計画が「リーダーシップの再定義」につながった
2代目社長がまず伝えたのは、「これからのC社は、社長一人ではなく社員みんなでつくっていきたい」というメッセージです。作成された3ヵ年ビジョンには、以下のようなゴールが盛り込まれていました。
- “先代の背中”ではなく、“数字と役割”で判断できる会社にする
- 年間売上 8億円 → 10億円
- 若手リーダー3名を育成・登用
- 社内評価制度の再設計と運用開始
つまり、これまで曖昧だった“経営のかたち”を、組織全体で見えるようにしたのです。
「社長だけが考える」から「幹部でつくる」計画へ
これまでC社では、「経営=社長が全部決める」が当たり前でした。
しかし、今回は違いました。
- 幹部メンバー全員が「未来の理想像」から逆算して計画を設計
- 各部署に応じたKPIと行動目標を明文化
- 実行責任も、社長ではなく“現場の幹部”が握る体制へシフト
その結果、経営が「個人からチーム」へと自然に移行していったのです。
KPIの設計と、現場での具体的実行
項目 | 現状 | 3年後目標 | 実施内容 |
---|---|---|---|
売上高 | 8億円 | 10億円 | 提案営業強化、新規チャネル開拓 |
幹部会開催頻度 | 月1回(不定期) | 月2回(定例化) | アジェンダ明確化・議事録共有 |
若手リーダー登用 | 1名 | 3名 | キャリアパス再設計、育成制度導入 |
このように、数字だけでなく「動きやすい行動計画」に落とし込んだのがポイントです。
半年後に生まれた変化:「決められる人」が増えた
中期経営計画を導入してから半年。
社内には「○○さんに聞けばいい」と言われる“判断力のあるリーダー”が育ち始めました。
ある社員はこう話します。
「これまでは“社長が決める”が普通でした。でも今は、自分たちも“考えて動く”チームに変わってきたと思います。」
つまり、中期計画は“計画のための計画”ではなく、“自律型組織へのスイッチ”になったのです。
中期経営計画は、“引き継ぐ”のではなく“共に創る”ためのツール
中期経営計画は、ただの数字目標ではありません。
とくに老舗企業や家業では、「経営のかたち」そのものを問い直す機会になります。
- どんな未来を描くのか
- 誰と、どうやって進めていくのか
この対話を“社長ひとり”ではなく、“組織全体”で始めることこそが、次世代経営の第一歩になるのです。
まとめ:事業承継は“肩書きの継承”ではなく“経営の進化”である
事業承継とは、単に社長交代をすることではありません。
「経営の責任とリーダーシップ」を、組織全体で共有していくプロセスです。
C社のように、中期経営計画を“共通言語”にすることで、
組織の“意思決定の仕組み”そのものが進化していきます。
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