歯科チームビルディング|心理的安全と承認文化で辞めない職場へ
「スタッフがすぐ辞めてしまう」「チームの雰囲気が重い」「院長が一人で全部抱えている」——そんな悩みを抱えていませんか?
実は、“辞めない職場”には共通点があります。それが【心理的安全性×承認文化】を軸にしたチームビルディングです。
この記事では、歯科医院の現場で実際に成果を出している「正しいチームづくり」の方法を、ワークショップや面談設計の実例とともに紹介します。小さな一歩が、離職を防ぎ、やる気と信頼が続くチームをつくります。
なぜ今、歯科医院にチームビルディングが必要なのか
人間関係トラブルと離職が経営リスクになる時代
今、歯科医院における最大の経営リスクは「人が辞めること」です。スタッフ1人の退職がもたらすのは——
- 採用コストの増加
- 教育リソースの浪費
- 患者対応や診療効率の低下
- チームの士気ダウン
特に衛生士や受付の欠員は、医院の雰囲気と信頼感に直結します。多くの離職は「スキル不足」ではなく、「努力が報われない」「人間関係が疲れる」といった感情面のストレスが原因です。
だからこそ今必要なのは、「院長が全部見る」ではなく、“チームで支え合う仕組み”。チームビルディングは、人材定着と経営の安定を同時に実現する医院戦略です。
離職を防ぐ評価制度の整え方は、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
「チーム医療」実現には“心理的安全性”が欠かせない
本当のチーム医療とは、職種を越えて協働すること。その基盤となるのが、スタッフが安心して発言できる心理的安全性です。
心理的安全性が低い職場では——
- ミスが起きても言えない
- 指示待ちが増える
- 改善提案が出ない
一方、心理的安全性が高い職場では、「失敗を共有し、次に活かす」「質問を歓迎する」空気が根づきます。これが信頼と学びの循環を生みます。
そのための仕掛けとして効果的なのが、
- ありがとうカード
- 称賛ミーティング
- 小さな成功を共有するワークショップ
感謝を“形にする仕組み”こそが、医院の空気を明るくし、自然なチームワークを育てます。
コミュニケーション不全が生む“やる気の断絶”とは
院内の空気が悪くなる最大の要因は、話しているようで話していないコミュニケーション不全です。よくあるサインは——
- 「報連相はしているけど、伝わってない」
- 「会議をしても何も変わらない」
- 「新人とベテランがかみ合わない」
これらはやる気の断絶を招きます。解決の第一歩は、「報告」ではなく“対話”に変えること。
たとえば、
- 週1回の目的共有ミーティング
- 月1回の振り返りワークショップ
- スタッフ全員参加の感謝・気づきの時間
を設定することで、立場を越えた信頼が生まれます。「話す」から「聴き合う」へ変わる瞬間、チームは動き出します。
歯科医院で起こりがちな“チーム崩壊”の3つのサイン

ベテランと新人の間に“壁”ができている
「最近の子は…」「昔はこうだった」——こんな言葉が出たら要注意。世代間の“壁”ができているサインです。
ベテランは「教えても響かない」と感じ、新人は「何を頑張ればいいか分からない」と萎縮。結果、学びも連携も止まります。
この壁を壊すには、共通言語の可視化がカギ。行動指針を“現場の言葉”に置き換え、全員で理念ワークショップを行いましょう。
「どうすれば患者さんが笑顔になるか」を語り合うだけで、関係性が一気に変わります。
報連相が機能せず、ミスや不信感が増えている
「聞いていない」「伝わっていない」が増えると、それは単なる情報伝達の問題ではなく、信頼の欠如です。
報連相を“叱責のための儀式”にしてはいけません。目指すべきは、フィードバックが循環するチームです。
おすすめは、1on1やミーティングでの3ステップ会話法:承認→改善→次のアクション。
「できたこと」も「できなかったこと」も安心して話せる空気をつくることで、ミスは減り、信頼が戻ります。
院長がすべてを背負い、チームが自立していない
「結局、院長が全部決めないと進まない」——そんな状況なら、チームが“依存体質”になっている証拠です。
チームを自立させる第一歩は、リーダー層を育てること。チーフや衛生士リーダーに次のような役割を任せましょう。
- ミーティングの一部進行
- 新人教育・フォローアップ
- チーム内の意見集約
任せる勇気が、チームを育てます。信頼して任せるほど、リーダーが育ち、院長の負担は確実に減ります。最終的には、院長が“見守る立場”へとシフトできます。
“辞めない職場”をつくる歯科チームビルディングの正しい方法
離職率の高い医院と定着する医院の差は、「チームの設計思想」にあります。本章では、現場で実践できる歯科チームビルディングの方法を、心理的安全性×承認文化×リーダー育成の視点から解説します。どれも「理念」ではなく、「明日から現場で使える」実践型メソッドです。
①チームの目的を明確にし、“共通言語”を作る
理念・行動指針を“現場の言葉”に置き換える
多くの歯科医院では、「理念はあるけど浸透していない」という課題があります。スタッフが“自分ごと”として動くためには、理念を日常業務の言葉に翻訳することが大切です。たとえば——
- 「患者第一主義」→「患者さんの“ありがとう”を1日3回もらう」
- 「チームワーク重視」→「声をかけ合って助け合う」
このように、理念を行動レベルに落とし込むことで、全員が同じ方向を向き始めます。
週次ミーティングやワークショップで目的を共有する
「共通言語」をつくるには、繰り返しの共有が不可欠です。週1回のショートミーティングで、
- 今週のチーム目標
- 達成できた行動例
- 次の挑戦テーマ
を話し合いましょう。さらに、月1回のワークショップ形式ミーティングで、「理念をどう現場で実践するか」を議論すると、チームの目的が自然に浸透します。
②感謝と承認の文化を仕組み化する
“ありがとうカード”や“称賛ミーティング”の導入
「ありがとうを言葉にする文化」は、心理的安全性の第一歩です。忙しい現場ほど、“感謝の言葉”は後回しになりがち。だからこそ、仕組みで感謝を見える化しましょう。おすすめの仕掛けは以下の2つです。
- スタッフ同士で送り合う「ありがとうカード」
- 週1回の「称賛ミーティング」で“誰が誰に感謝されたか”を共有
感謝の連鎖が広がると、チームの空気は一気に柔らかくなります。
承認の積み重ねが心理的安全性を育てる
承認は「モチベーション」ではなく、「信頼の土台」です。スタッフが「自分は見てもらえている」と感じることで、発言や挑戦が増えます。結果、報連相・改善提案・新人教育など、全ての行動が前向きに変化します。たった一言の「ありがとう」が職場の空気を変える——それを仕組みで続けるのが、離職を防ぐ最大の秘訣です。
③コミュニケーションの質を高める「対話の場」を設計する
1on1面談・振り返りワークショップの実践法
面談は「評価の場」ではなく「対話の場」。スタッフの“感情”や“本音”を引き出す時間として機能させましょう。おすすめは月1回・15分の1on1。ポイントは次の3ステップです。
- 承認(最近よかったことを伝える)
- 課題(悩みや困りごとを共有)
- アクション(次の行動を一緒に決める)
また、チーム全体で行う振り返りワークショップも有効です。失敗や工夫を共有し合う時間が、「安心して話せる文化」を育てます。
面談の設計・質問例は、こちらの記事で具体的に確認できます。
報連相ではなく“フィードバック循環”を育てる
「報告・連絡・相談」だけでは、チームは進化しません。今求められるのは、「伝える」ではなく「返す」文化。つまり、双方向のフィードバック循環です。
- 報告のあとに「どう感じた?」「次はどうしよう?」を返す
- 面談後に「行動してどう変わったか」を共有する
この繰り返しが、学びの循環と信頼関係の深まりを生み出します。
④チーフ・リーダーを巻き込む“共育マネジメント”
リーダー育成×チーム運営を並行して進める
院長がすべてを抱えると、チームは自立しません。次世代リーダーの育成こそ、医院成長のカギです。リーダーに任せたい役割は、
- 朝礼・ミーティングのファシリテーション
- 新人教育・OJTの設計
- 院内イベントやワークショップの推進
「一緒に育つ=共育(きょういく)」の姿勢で、信頼して任せることでチーム力が上がります。
“任せる勇気”が院長の負担を減らす鍵
任せることは「手放すこと」ではなく、「育てること」です。リーダーが判断・提案できる環境を整えることで、院長は経営・戦略・教育など本来の仕事に集中できます。最終的には、院長が“監督”ではなく、“応援者”になること。これが、辞めない職場への最短ルートです。
⑤教育・評価・承認をつなぐ「モチベーションPDCA」
面談→教育→評価→承認を一気通貫で回す
モチベーションは一度上げても、仕組みがなければすぐ下がります。大切なのは、「動機づけのサイクル」を仕組みとして回すこと。
- 面談で課題と目標を設定(Plan)
- 教育・OJTで支援(Do)
- 評価で成果を見える化(Check)
- 承認で次の意欲を生む(Act)
この流れを月次のPDCAサイクルとして定着させましょう。
定例ミーティングで改善と称賛をセット化
PDCAを“管理ツール”で終わらせないために、定例ミーティングで「改善+称賛」をセットにするのがおすすめです。たとえば、
- 「今月の改善テーマ」
- 「今月のグッドアクション」
を毎回共有するだけでも、前向きな空気が生まれます。称賛と改善が同時にあるチームは、成果も人間関係も育つ職場へと変わります。
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Bay3株式会社では、歯科医院に特化した「評価×面談×教育」設計支援を行っています。
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「定着」「信頼」「成長」が循環するチームづくりをサポートします。
現場で効果を発揮するチームビルディング施策例

チームビルディングは“理念”ではなく“実践”で根づきます。今回紹介する4つの歯科チームビルディングの方法は、心理的安全性と承認文化を高めるための具体的ステップです。どれもすぐに取り入れられる内容で、チームの空気を変えるきっかけになります。
施策①:1on1+サンクスカードで“信頼の土台”をつくる
日々の1on1面談とサンクスカードの組み合わせは、歯科医院で最も導入しやすく効果が高い施策です。「話す」と「伝える」を仕組み化することで、スタッフ間の信頼関係を可視化できます。
- 1on1面談:月1回・15分でもOK。感情や課題を共有する“安心の場”をつくる。
- サンクスカード:スタッフ同士が「ありがとう」を送り合う仕掛け。掲示や朝礼で共有すると承認文化が広がる。
ポイントは「行動に対して感謝を伝える」こと。「急患対応ありがとう」「新人フォロー助かった」など、具体的な行動を言葉にするのが信頼を育てる鍵です。
施策②:スタッフ主導のワークショップで“気づき”を促す
チームの一体感を育てるには、“院長主導の場”から“スタッフ主導の場”へシフトすることが重要です。おすすめは月1回のワークショップ型ミーティング。
- テーマ例:「チームがうまく回っているとき、どんなことが起きている?」
- テーマ例:「ありがとうをもっと増やすには?」
模造紙や付箋を使って自由に意見を出し合い、最後にチームでまとめる。このプロセスが「自分たちで考える文化」を育てます。ワークショップは、チームが“やらされる側”から“創る側”に変わるスイッチ。雰囲気も格段に良くなります。
施策③:ありがとう共有ミーティングで“関係の見える化”
週1回5分でOKの「ありがとう共有ミーティング」は、医院全体の空気を変える最強ツール。スタッフ一人ひとりが「今週感謝したい人と理由」を話すだけのシンプルな時間です。
- 「〇〇さんのサポートが助かりました」
- 「患者さん対応でフォローしてくれてありがとう」
これを続けることで、承認が習慣化し、信頼が可視化されます。「褒められる」「感謝される」経験が増えると、自然とモチベーションも上がります。感謝の可視化=心理的安全性の可視化。空気がやわらかくなり、コミュニケーションエラーが減少します。
施策④:チーム単位の目標設定で“自走文化”を育てる
チームビルディングの最終形は、「院長が指示しなくても動く組織」です。そのために効果的なのがチーム単位の目標設計。やり方はシンプルです。
- 「今月の目標(例:ミスゼロ・患者満足度アンケート○件)」をチームで設定
- 週1回の短い共有で進捗と工夫を話す
- 達成できたら全員で承認・称賛
これにより、スタッフは“任され感”と“成果の実感”を得ます。チームで成功体験を積み重ねることで、「自分たちの医院」という当事者意識が育ちます。
成果が出た歯科医院のチームビルディング事例
机上の空論ではなく、実際に結果が出た医院の取り組みを紹介します。ここで挙げる3つの事例は、いずれも心理的安全性と承認文化をベースにした組織変革によって、離職率・雰囲気・定着率が大きく改善しています。
事例①:承認文化で離職率15%→5%に改善
課題: スタッフ間の不信感と無言の空気。感謝や称賛がない“冷たい現場”。
施策: 「ありがとうカード」と「称賛ミーティング」を導入。院内掲示板にカードを貼り、朝礼で共有する仕組みを設計。
結果: 1年後、離職率が15%→5%に改善。「前よりも話しやすくなった」「雰囲気が明るくなった」とスタッフの声も多数。承認が循環し、自然と助け合いが生まれました。
事例②:ワークショップ導入で院内の雰囲気が激変
課題: ベテランと新人の間に壁があり、チームの一体感が欠けていた。
施策: 「気づきワークショップ」を月1で実施。“お互いの強み”や“助けられた瞬間”を話し合う形式に変更。
結果: 半年でスタッフの表情が変化。「チームで働くって楽しい」「意見を出しても大丈夫」という声が増え、心理的安全性スコアが大幅に向上しました。
事例③:リーダー育成×1on1でチームが自律的に動くように
課題: 院長が現場をすべて管理し、リーダー層が育っていなかった。
施策: 「リーダー研修+1on1面談設計」を導入。チーフが自分のチームメンバーと月1回対話し、目標設定と振り返りを担当。
結果: 3か月後にはリーダー主導のミーティングが定着。院長が細かい指示を出さなくても現場が回るように。「任せても大丈夫」という信頼がチームに根づきました。
チームビルディングを“仕組み化”して継続させるコツ

チームビルディングは「やって終わり」にしてしまうと、半年も経たずに形骸化します。ポイントは、日常業務の中に“仕組み”として組み込むこと。ここでは、属人化せず継続的にチームを強くする3つのコツを紹介します。
会議・教育・評価を連動させて“チームPDCA”を回す
院内ミーティング・スタッフ教育・評価面談——これらがバラバラだと、組織は前に進みません。理想は、「会議→教育→評価→承認」までを一気通貫で回す“チームPDCA”をつくることです。
- 会議:目的を明確にして、行動テーマを全員で決定する
- 教育:テーマに沿った研修・ロールプレイ・OJTを実施
- 評価:学びをどう活かせたかを行動レベルで振り返る
- 承認:成長や改善をきちんと認め、次のステップへつなげる
これを月単位で回すことで、「言いっぱなし」「やりっぱなし」を防止できます。チームPDCAは、“信頼と改善”をセットで回す歯科医院の新しいマネジメント手法です。
属人化しない“心理的安全性ミーティング”の習慣化
心理的安全性を高めるには、特別な施策よりも“定例の安心の場”が重要です。おすすめは、週1回10分の「心理的安全性ミーティング」。
- 「今週よかったこと」
- 「今週ちょっと気になったこと」
- 「来週やってみたいこと」
この3項目を全員で共有します。意見を言っても責められない、感謝が交わされる、そんな空気を“定例化”することがカギです。
さらに、ファシリテーター(司会役)を持ち回りにすることで属人化を防止。院長が主導せずとも、スタッフが自発的に運営できる「安心の習慣」が根づきます。継続することで、“発言しやすさ”が文化になり、チームの成長スピードが確実に上がります。
リーダー層を育て、院長が“見守る立場”に変わる
チームが自走する最大のポイントは、「リーダーを育てる仕組み」にあります。院長がすべてを決めてしまうと、チームは成長の機会を失ってしまいます。
- ミーティングの進行を任せる
- 新人教育のプランを一緒に考える
- チームの目標を自分たちで設定させる
任せることで責任感が生まれ、自然と主体性が育ちます。そして、院長は「管理者」から「支援者」へ立場を移す。これが“共育マネジメント”の本質です。リーダーが育ち、院長が楽になる好循環が生まれます。
評価・会議・研修を連動させる運用設計は、こちらの記事が指針になります。
まとめ|心理的安全性と承認文化が“辞めない職場”をつくる
最後に、この記事の要点を整理しましょう。歯科医院で離職を防ぎ、強いチームを育てるカギは「心理的安全性」と「承認文化」です。
人が辞めない医院は「対話」と「感謝」が根づいている
- 感謝を伝える
- 意見を聞き合う
- 失敗を責めない
成功している医院ほど、1on1やミーティングで“対話の質”を重視しています。そして、日々の小さな「ありがとう」が職場の空気をやわらげています。この3つが揃えば、離職は確実に減ります。チームの成長は「仕組み」ではなく「関係の質」から生まれるのです。
ワークショップを通じて、気づきと信頼を育てよう
ワークショップは、気づきを共有するチームの鏡。上下関係を越えて“考えを出し合う”ことで、信頼が生まれます。
- 「チームがうまくいった瞬間はどんな時?」
- 「自分が大切にしたい仕事の姿勢は?」
そんな問いを共有し合うだけで、医院の空気は変わります。ワークショップ=チームの「再スタートボタン」。関係をリセットし、再構築する最高の機会です。
まずは“ありがとうを見える化”するところから始めよう
- 行動を認める
- 感謝を伝える
- 承認を日常にする
難しい理論や制度改革よりも、最初の一歩はシンプルで構いません。「ありがとう」をカード・掲示・朝礼で“見える化”することから始めましょう。それだけでチームは確実に変わります。辞めない職場づくりの第一歩は、感謝を仕組みにすること。今日から“ありがとうの循環”を、あなたの医院にも生み出しましょう。
Bay3株式会社は、承認・評価・キャリア支援を一体化した“自走型チームづくり”をサポートします。
“辞めない組織”を仕組みからつくる実行型コンサルで、現場の空気を変えていきましょう。

