You are currently viewing 中間管理職が板挟みになる会社の共通点|役割と権限の決め方で解く

最終更新日:2026年10月16日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃

中間管理職が上司と部下の板挟みになるとき、原因は本人の能力や性格より、役割と権限の決め方にあることが多くあります。責任だけが重く、決めてよい範囲と見るべき数字が決まっていない会社では、経験のある人が管理職になっても同じ状態になりやすいからです。

板挟みを解消するには、管理職の役割・権限・見る数字を書面にし、毎週の会議で決まったことを記録し、管理職が相談できる場をつくることです。この記事では、板挟みが起きる会社の共通点と、組織と個人の両方でできる対処をまとめました。管理職の方で自分にできることを先に知りたい場合は上司と部下への伝え方の章から、経営者の方は経営者が管理職の孤立を防ぐ方法の章から読むと早いです。

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この記事でわかること
  • 中間管理職の板挟みが起きる構造と、中間管理職の4つの役割
  • 板挟みになる会社に共通する5つの原因
  • 役割・権限・見る数字を1枚に書く方法と、その例
  • 上司と部下への伝え方を「事実・理由・決まったこと・相談できること」に分けるコツ
  • 経営者が管理職の孤立を防ぐためにできること

中間管理職の板挟みは、本人の能力よりも役割と権限の決め方で起きます

中間管理職の板挟みとは、経営の方針と現場の事情の両方を背負いながら、どちらにも決定権を持たないために、両者の不満を受け止め続ける状態です。上からは数字の達成を求められ、下からは仕事の量や評価への不満が届きます。管理職は上と下の間で調整する役目です。ところが、自分で決めてよいことが決まっていないと、上の言葉を下に、下の不満を上に運ぶだけの伝言役になり、どちらからも信頼されなくなっていきます。

上(経営者・上司)から来るもの下(部下・現場)から来るもの
売上や利益の目標、急な方針の変更人が足りない、仕事が多すぎるという不満
「現場をまとめるのが管理職の仕事だ」という期待「上に言ってくれない」という不信
理由の説明がない指示「なぜそれをやるのか」という質問
部下の評価をつけるよう求められる評価の基準が分からないという不満

表1 中間管理職に上と下から届くもの

上と下で求められることが食い違うことと、自分の役割や権限がはっきりしないことは、どちらも働く人の大きなストレスになります。板挟みは、この2つが一度に起きている状態です。気持ちの持ち方だけで乗り切ろうとすると、管理職が疲れ切ってしまい、チームの仕事や職場の人間関係にも響きやすくなります。

中間管理職の役割は、橋渡し・数字の管理・部下の育成・自分の担当業務の4つです

役割を4つに分けて書き出しておくと、板挟みの場面で、いま自分がどの役割で動いているのかを確かめやすくなります。

  • 経営と現場の橋渡し:経営の方針を現場の行動に置き換え、現場の状況を経営に報告する
  • 業務と数字の管理:チームの目標と進み具合を把握し、遅れに手を打って成果につなげる
  • 部下の育成と指導:部下の成長を支え、任せられる仕事を増やす
  • 自分の担当業務:中小企業では、管理職が現場の仕事も持つプレイングマネージャーであることが多くあります

プレイングマネージャーは、自分の作業に時間を取られるほどマネジメントが後回しになります。役割の分け方はプレイングマネージャーの限界で詳しく書いています。

板挟みになる会社では、方針の意図・権限・評価の基準・相談先・時間のどれかが欠けています

次の5つは、中間管理職が板挟みになる会社によく見られる共通点です。どれも管理職個人の努力では埋めにくく、会社が仕組みとして整えるものです。

共通点起きること直す方向
1. 方針の背景が伝わらない「とにかくやれ」としか言えず、部下が納得しない指示と一緒に、目的と数字の意図を伝える
2. 責任はあるのに権限がない決められないことの不満を受け止め、上に聞きに行くだけになる管理職が決めてよい範囲を書面にする
3. 評価の基準があいまい上司と部下の評価が食い違い、説明がつかない等級ごとの役割と評価項目を決める
4. 相談できる相手がいない悩みを抱え込み、孤立する管理職どうしの会議や1on1をつくる
5. 自分の業務で手一杯人員の不足を管理職が埋め、負荷が集中する。部下と話す時間がなく、不満に気づくのが遅れる担当業務を減らし、マネジメントの時間を確保する体制にする

表2 中間管理職が板挟みになる会社の共通点

よくある失敗

経営者が管理職を飛ばして部下に直接指示を出すと、部下は管理職より経営者の意見を優先するようになりやすく、管理職は決まったことを後から知る立場になります。指示は管理職を通すと経営者自身が決めておけば、このずれは起きにくくなります。

板挟みを減らすには、役割・権限・見る数字を1枚に書きます

管理職ごとに役割・決めてよいこと・見る数字・報告することを1枚に書いて共有すると、周りが管理職に期待することが明確になります。上司と部下の両方が同じ紙を見て、何を管理職に相談すればよいかを理解できます。口頭で任せているだけでは、何かあるたびに「それは聞いていない」というトラブルになります。

書くこと例(営業チームのリーダー)
役割チームの売上目標を達成し、メンバー5名の育成を担う
決めてよいこと(権限)メンバーの担当先の割り振り、一定額までの値引き、シフトの調整
見る数字チームの商談件数、受注件数、受注金額(毎週)
上に報告・相談すること決めた範囲を超える値引き、採用と退職、目標に届かない見通し
部下に任せること担当先ごとの提案の内容、日々の作業の順番

表3 管理職の役割・権限・見る数字を書いた例(内容は書き方の例です)

会社3年計画と今期の目標、重点施策を決める
部署部署ごとのKPIと、その数字を見る人を組織図に書き込む
管理職見る数字と決めてよい範囲の中で、チームの行動を決める
部下週報に数字と行動を記録し、来週やることを決める

図1 会社の目標から、管理職と部下の行動までのつながり

Bay3が6か月で進める支援の例では、2か月目に部署ごとのKPIを決め、誰がどの数字を見るかを組織図に書き込みます。組織図の上で数字の担当が見えていると、部下は何を管理職に相談すればよいかが分かり、経営者は何を管理職に任せたのかが分かるので、管理職が伝言役になる場面が減りやすくなります。組織図の書き方は組織図の作り方、役割の決め方は中小企業の組織づくりにまとめています。

上司と部下への伝え方は「事実・理由・決まったこと・相談できること」に分けます

伝えるときは、起きている事実、その理由、すでに決まったこと、相手が意見を言える部分の4つに分けて話します。上司にも部下にも同じ順番で話すと、話が通りやすくなります。感情のまま伝えると、相手は内容より言い方に反応してしまいます。

相手伝え方のコツ言葉の例
上司・経営者現場の不満を、数字や損失の見込みに置き換え、代わりの案とセットで伝える「今の人数でこの件数を続けると、来月に2人が残業の上限を超えます。A案かB案で調整させてください」
部下決まったことと、意見を言える部分を分けて伝える「目標の件数は会社で決まったことです。どの順番で回るかは、みんなの意見で決めたいです」
部下(不満を聞くとき)まず言い分を最後まで聞き、事実と要望を整理する「何が起きていて、どうなってほしいかを教えてください」

表4 上司と部下への伝え方のコツ

  • 事実:部下の不満を上に上げるとき、起きていることを数字でそろえたか
  • 理由:上の方針を伝えるとき、目的と背景を自分の言葉で具体的に説明できるか。できないことは、理由と一緒に早めに伝えたか
  • 決まったこと:誰が・何を・いつまでにやるかまで記録したか
  • 相談できること:相手が意見を言える部分と、代わりの案を示したか

管理職本人は、チームの目標を判断の軸にして一人で抱え込まないようにします

会社の仕組みが整うまでの間も、管理職本人が負担を減らすためにできることがあります。

  • 自分のゴールを決める:上司と部下の意見が割れたら、チームの目標の実現に近づくのはどちらかで決めます。判断の軸が1つあると、迷う時間が減ります
  • 経営の視点で考える:方針の意図を上司に直接聞き、会社の考え方と、その方針の価値を自分の言葉で説明できるようにします
  • 一人で解決しようとしない:社外の知人や、ほかの部署の管理職に状況を話して、自分が見落としていることがないかを確かめます
  • 自分の感情を記録する:疲れや不満を感じた日と、そのきっかけを短く書き残しておくと、無理が続いていることに早く気づけます

部下の本音を聞く対話の場として、月1回ほどの1on1を定期的に設けておくと、不満が大きくなる前に気づけます。上司との対立を恐れて何でも引き受けると、管理職が無理を抱え込むことになります。完全に両者の意見を通すことはできないので、優先する順番を決めて判断することも管理職の仕事です。

毎週の会議で決まったことを記録すると、言った言わないの板挟みが減ります

毎週の会議で「誰が・何を・いつまでに」を決めて記録すると、上司と部下の間で決定の内容がずれにくくなります。数字を確かめる場が毎週あれば、管理職が伝言に走る回数も減っていきます。「聞いていない」「そうは言っていない」という言い合いになっても、記録を開いて確かめられます。

  1. 数字の確認(0〜3分):届いていないKPIだけを読み上げます。
  2. 原因と打ち手(3〜10分):未達の担当者が、原因と打ち手を1分で話します。
  3. 決定と記録(10〜14分):誰が・何を・いつまでにやるかを決めて記録します。
  4. 先週の決定の確認(14〜15分):先週決めたことが実行されたかを確かめます。

Bay3の週報・週次ミーティングのフォーマットの、月曜朝15分の進め方

このフォーマットでは、金曜の夕方までに各担当が週報を入力し、リーダーがコメントを書いてから、月曜の朝に会議をします。会議では報告を読み上げないので、15分に収まりやすくなります。司会は持ち回りにすると、管理職だけが会議を回す負担も減ります。報連相が続かない職場の直し方は報連相が定着しない原因でも書いています。

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週報・週次ミーティングのフォーマット(Excel)を無料で配布しています

担当ごとのKPIの目標と実績、今週やったこと、来週やること、リーダーのコメントを1行で書ける週報と、月曜朝15分の会議の議題表、決定事項の記録のシートが入っています。

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経営者は、管理職の相談先と学ぶ場をつくって孤立を防ぎます

管理職の板挟みを個人の問題にせず、経営者が相談先と学ぶ場と時間をつくることで、管理職は役割に集中できるようになります。社員10〜100名程度の会社では、大きな会社なら人事部が担う仕組みづくりを、社長が1人で抱えていることが多く、管理職の支援まで手が回らないこともあります。

経営者がやること管理職にとっての効果
管理職と月1回の1on1をする上に相談できる場ができ、孤立しない
管理職どうしの会議をつくる同じ立場の人と悩みや工夫を共有できる
指示は管理職を通すと決める部下からの信頼と、管理職の立場が守られる
管理職研修の機会をつくる伝え方や面談のスキルを、経験に頼らず学べる
評価の基準と制度を整える部下の評価を説明できるようになり、モチベーションの向上につながる

表5 経営者が管理職を支えるためにできること

補足:パワーハラスメントを防ぐ措置は、中小企業も義務です

労働施策総合推進法の改正により、職場のパワーハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置は、2022年4月1日から中小企業の事業主にも義務になりました(厚生労働省)。数字のプレッシャーを受けた管理職が、部下に強い言葉を向けてしまう場面もあります。相談の窓口を決めて社員全員に知らせ、指導とハラスメントの線引きを管理職と共有しておくことは、管理職と部下の両方の安全を守ることにもなります。管理職自身が上から強い言葉を受けているときも、同じ窓口に相談できます。

支援の現場から(三浦)

支援した人材紹介会社の1社では、管理職研修と週次のKPIミーティングを導入しました。数字で動く会議の形ができ、現場が自分たちで改善を回すようになって、売上は約3倍になっています(数字は支援先からうかがったもので、業績の変化には市場や支援以外の取り組みの影響も含まれます)。

Bay3の事例ページには、管理職研修を導入した企業の経営者の声も載せています。「マネージャー層の育成が進み、属人的だった業務がチームで回るようになりました。」

職場の環境を整えることは、管理職が安心してチームの課題に対応できる土台になります。管理職を育てる計画の立て方は管理職の育成方法、Bay3の管理職研修の内容はサービスの「組織図・会議体の整備と管理職研修」で紹介しています。

中間管理職の板挟みについてよくある質問

板挟みになったとき、管理職が最初にやることは何ですか。

起きていることを、事実・自分の解釈・上司と部下それぞれの要望に分けて書き出すことです。整理すると、自分が決めてよいことと、上に判断を仰ぐことが分かれ、次に誰と話すかが決まります。

部下の不満を上司に伝えると、自分の評価が下がりませんか。

不満をそのまま伝えると、愚痴として受け取られることがあります。事実と数字、放っておいたときの影響、代わりの案をそろえて伝えれば、上司にとっては判断に必要な報告になります。

経営者として、板挟みになっている管理職にどう声をかければよいですか。

まず、管理職が抱えている課題を1on1で聞き、会社の側で決めるべきこと(権限の範囲、目標の意図、人員)を経営者が引き取ります。「もっとうまくやれ」と言う前に、決めてよい範囲を一緒に書き出すことから始めます。

管理職に向いていない人が、板挟みになっているのではありませんか。

向き不向きはありますが、役割と権限が決まっていない会社では、経験のある人でも同じ状態になります。先に役割と権限、見る数字を決め、その上で本人の能力と意思を確かめてから判断するのが順番です。

まとめ:板挟みは、役割と権限を書き出すところから減らせます

中間管理職の板挟みは、会社が役割と権限、評価の基準、相談先を決めることで減らせます。管理職本人、経営者、チームのそれぞれが、次のことから始めてください。

  • 管理職本人:自分の役割・決めてよいこと・見る数字・上に報告することを1枚に書き、上司に確かめてもらう
  • 経営者:管理職と月1回の1on1の日を決め、指示は管理職を通すと決める
  • チーム:毎週の会議で、誰が・何を・いつまでにやるかを記録する
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Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
WRITER
三浦 一晃(Bay3株式会社 代表取締役)

はま寿司で12店舗・1,000名以上のマネジメントを経験し、株式会社識学で組織コンサルタントとして34社、カスタマーサクセスとして42社を担当。2025年にBay3を設立し、中小企業と歯科医院の経営計画・評価制度づくりを支援しています。著書『評価制度が歯科医院の未来を決める』。

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Bay3の支援内容をもとに構成し、編集部が作成しています。