You are currently viewing 人事評価制度とは|目的と評価の基準、中小企業で止まらない作り方

最終更新日:2026年10月10日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃

人事評価制度とは、社員の仕事ぶりを会社が決めた基準で評価し、その結果を等級(役割)・給与・育成に反映する仕組みです。目的は、会社の目標と社員一人ひとりの行動の向きをそろえることにあります。

中小企業でつくるときは、等級・評価・報酬の3つを一緒に決め、経営計画の目標を評価項目に入れます。この記事では、社員10〜50名ほどの会社の経営者に向けて、人事評価制度の目的と仕組み、評価の基準と手法、導入の手順、運用が止まらないための考え方をまとめました。

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この記事でわかること
  • 人事評価制度の定義と、あわせて決める等級・評価・報酬の3つの制度
  • 人事評価制度を導入する目的と、メリット・デメリット
  • 成果・行動・能力の3つの評価基準と、代表的な評価の手法
  • 中小企業が人事評価制度をつくる手順
  • 運用が止まる理由と、評価結果を面談と育成に活用する方法

人事評価制度とは、社員の仕事を会社の基準で評価し、給与と育成に反映する仕組みです

評価の結果は、昇給・賞与・昇格の決定と、次に伸ばすスキルを決める育成の両方に使います。評価の基準が社内で明確に共有されていれば、社員は「何をすれば評価されるか」を分かったうえで働けます。反対に基準が見えない状態だと、上司の印象で給与が決まっていると受け取られ、不満と離職のきっかけになります。

人事評価制度と人事制度は、混同されやすい言葉です。人事制度は採用・配置・評価・報酬・育成など従業員に関する決まりの全体を指し、人事評価制度はその中で「評価」と、評価を処遇につなげる部分を担います。

評価制度は、等級制度・報酬制度とセットで決めます

人事制度は、等級制度・評価制度・報酬制度の3つを柱にしています。評価は等級制度で決めた役割を基準に行い、その結果を報酬制度で給与に反映するため、どれか1つだけを整えても、ほかの2つとつながっていなければ制度は機能しません。

制度決めること中小企業で決めておきたい例
等級制度社員を役割や能力で段階に分け、それぞれに期待することを決める一般社員・リーダー・管理職の3段階と、各段階の役割と責任
評価制度等級ごとの評価項目と基準、評価の時期と方法を決める半年に1回、上司が評価し、面談で結果を伝える
報酬制度評価の結果を給与・賞与・昇給にどう反映するかを決める評価の段階ごとの昇給額と、賞与の配分の決め方

表1 人事評価制度とセットで決める3つの制度

1. 等級役割と期待を決める
2. 目標等級と経営計画から
3. 評価成果と行動を見る
4. 処遇昇給・賞与・昇格
5. 育成面談で次の目標へ

図1 人事評価制度の基本的な流れ

等級の決め方には、仕事をこなす能力で決める職能資格制度、担当する職務で決める職務等級制度、役割の大きさで決める役割等級制度があります。日本の企業では職能資格制度が広く使われてきましたが、能力は経験とともに上がるとみなされやすく、勤続年数に応じて等級が上がる運用になりがちでした。最近は、職務や役割で等級を決める会社も増えています。

人事評価制度の目的は、会社の目標と社員の行動の方向をそろえることです

人事評価制度の目的は、処遇を公平に決めることに加えて、会社の目標を社員の行動につなげ、人材を育てることにあります。評価を「給与を決めるための作業」としてだけ扱うと、評価の時期以外には誰も制度を意識しなくなります。

目的中身
処遇を公平に決める昇給・賞与・昇格の決定を、決めた基準と評価の結果で行う
会社の目標を共有する経営計画の目標を部署と個人の目標に分け、評価項目に入れる
人材を育成する次の等級に上がる条件を示し、足りないスキルを面談で伝えて、次の期に何を身につけるかを決める
上司と部下のコミュニケーションを増やす目標を決める面談と評価の面談で、上司が部下の状況を把握する

表2 人事評価制度を導入する目的

人事評価制度のメリットは納得できる処遇、デメリットは評価する側の手間です

導入の効果は、給与の理由を説明しやすくなることです。一方で、評価する上司の手間が毎期かかります。

導入のメリット
  • 給与や昇格の理由を社員に説明できる
  • 期待する行動がはっきりし、社員が何に力を入れればよいか分かる
  • 育成すべきスキルと人材が見え、適切な配置を検討しやすくなる
導入のデメリット・注意点
  • 評価シートの作成と面談に、上司の時間がかかる
  • 評価者によって甘さ・厳しさの差が出ることがある
  • 基準が実態と合わないと、かえって不満が増える

図2 人事評価制度のメリットとデメリット

評価の基準は、成果・行動・能力の3つの要素で決めます

評価の基準は、仕事の成果(業績)、成果に向けた行動、仕事に必要な能力の3つの要素に分けて決めます。3つの割合は等級によって変え、一般社員は行動と能力を、管理職は成果とチームの成果を重視するのが基本です。

評価の要素何を見るか営業職の例事務職の例
成果(業績評価)目標に対する達成の度合い売上・受注件数の目標の達成率締め日までの処理件数、ミスの件数
行動(行動評価)成果に至るプロセス(行動)を続けているか商談の件数、提案の準備、報告の速さ手順書の更新、ほかの担当への引き継ぎ
能力(能力評価)仕事に必要な知識・スキルを持っているか商品知識、顧客の課題を聞き出す力会計ソフトやシステムの操作、資格

表3 評価の3つの要素と職種ごとの例(内容は書き方の例です)

評価項目は、業種や職種で中身が大きく変わります。人の動かし方や評価の物差しが業種ごとに違うためです。

よくある失敗

他社の評価シートをそのまま使うと、勤務態度のような項目ばかりが並び、自社の売上や目標にどれだけ貢献したかが評価の対象に入らないことがあります。パフォーマンスの高い社員ほど評価で差がつかず、不満を持ちやすくなります。評価項目は、自社の業務の中身と、経営計画で実現したい目標から決めます。

評価の手法は、仕事の中身に合わせて1〜2つを選び、組み合わせて使います

評価の手法にはいくつかの種類があります。代表的なものは次の4つです。

手法特徴向いている会社
目標管理(MBO)期初に上司と部下で目標を決め、期末に達成度で評価する数字の目標を立てやすい職種が多い会社
コンピテンシー評価成果を出している社員の行動を基準にし、その行動ができているかを見る行動の質で差がつく仕事が多い会社
360度評価(多面評価)上司だけでなく、同僚・部下など複数の視点から評価する管理職のマネジメントを客観的に見たい会社
OKR挑戦的な目標と成果指標を決め、短い期間で進捗を確かめる。目標管理の仕組みで、達成率をそのまま評価や給与に使わないのが一般的変化の速い事業で、目標を頻繁に見直したい会社(評価はほかの手法と組み合わせる)

表4 代表的な人事評価の手法

手法は1つに絞る必要はなく、成果は目標管理で、行動はコンピテンシー評価で見る、のように組み合わせることもできます。ただし社員10〜50名の会社では、手法を増やすほど評価する上司の負担が増えるので、まずは1〜2つから始めます。

中小企業の人事評価制度は、経営計画の目標から等級・評価・給与を順に決めてつくります

人事評価制度は、現状の分析から始め、等級・評価項目・給与との連動を順に決め、社員に説明してから運用を始めます。先に評価シートだけをつくると、あとから等級や給与と合わない項目が出てきて、つくり直すことになりがちです。

  1. 現状を分析する:いまの給与の決め方、社員の不満、離職の理由、評価の課題を書き出します。
  2. 目的と方針を決める:何のために評価するのか、どんな人材を育てたいかを経営者が言葉にします。
  3. 等級と役割を決める:等級ごとに期待する役割と責任、上の等級に上がる条件を書きます。
  4. 評価項目と基準を設計する:経営計画の目標から、等級ごとの評価項目と、何ができたら何点かを決めます。
  5. 給与・賞与との連動を決める:評価の結果ごとの昇給額と賞与の配分を決めます。
  6. 説明と研修をして運用を始める:社員への説明会と、評価する上司の研修をしてから、最初の評価期間を始めます。

手順4と5で評価項目と給与を決めるとき、Bay3は経営計画から次の順につなげて設計します。経営計画、会議、評価制度、給与テーブルを別々に整えると、計画の目標が評価項目に入っていない、評価の結果を給与にどう反映するか決まっていない、といったずれが起きるためです。

3年計画3年後の売上・利益・人数を決める
年間目標今年の会社の目標と重点施策を決める
四半期のKPI施策ごとに、毎週確かめられる指標を置く
毎週の行動週報に数字と行動を記録し、会議で打ち手を決める
評価と給与週報のデータを評価に使い、昇給と賞与につなげる

図3 Bay3が経営計画から評価と給与までをつなげる順番

手順ごとの詳しい進め方と評価シートの書き方は人事評価制度の作り方、等級と評価に連動した給与の決め方は給与テーブルの作り方にまとめています。

支援の現場から(三浦)

これまでに支援した広告代理店では、評価制度の構築と運用に加えて採用戦略を見直し、必要な人数と配置を決めました。社員の目線がそろって判断の速い組織になり、適切な人員配置もできるようになりました。評価制度の導入から1年半で、年商は約2.7倍になっています(数字は支援先からうかがったもので、業績の変化には市場や支援以外の取り組みの影響も含まれます)。評価制度を導入した企業の経営者からは、「評価制度と給与が連動して、社員の納得感が大きく上がりました。」という声もいただいています。

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担当ごとのKPIの目標と実績、今週やったこと、来週やること、リーダーのコメントを書ける週報と、月曜朝15分の会議の議題表が入っています。週報に残った数字と行動は、評価の材料にそのまま使えます。

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評価制度は、評価する側の負担と給与とのずれで止まりやすいので、会社の規模に合う重さでつくります

評価制度が途中で止まる理由には、評価する人の負担が大きい、給与とつながっていない、人数に対して制度が重すぎる、などがあります。制度を作り直すときは、前の制度のどこに問題があって止まったのかを先に確かめます。

止まる理由起きること対策
評価する人の負担が大きい評価シートの記入が締め切りに間に合わず、面談が後回しになる評価項目の数と面談の回数を、会社の規模に合わせて絞る
給与とつながっていない評価をしても給与が変わらず、社員が制度を意識しなくなる評価の結果ごとの昇給と賞与の決め方を先に決めておく
人数に対して制度が重すぎる大企業の制度をまねて項目が多く、運用に時間がかかる等級を少なくし、1回の評価にかかる時間を見積もってから決める

表5 評価制度が止まる理由と対策

  • 評価の時期だけに記憶をたどって評価すると、直近の出来事に引っ張られます。週報など、日々の行動と数字が残る仕組みとあわせて運用すると、評価の根拠がそろいます
  • 経営計画で決めた目標と評価項目がつながっていないと、社員は評価を会社の成長と関係のないものと受け取り、運用が止まりやすくなります
給与に反映し始める時期は、遅らせても構いません

評価の結果を、最初の期から給与に反映させる必要はありません。はじめは上司と社員の目線合わせとして評価だけを運用し、基準がそろってから給与に連動させる進め方もあります。ただし、評価の結果を昇給と賞与にどう反映するかと、いつから反映するかは、運用を始める前に決めて社員に伝えておきます。決まらないまま評価だけを続けると、社員が制度を意識しなくなり、運用が止まる原因になります。

評価の結果は面談でフィードバックし、育成と次の目標に活用します

評価の結果は点数を伝えて終わりにせず、面談で理由と次の期待を伝えて、育成と次の目標の設定に使います。評価面談は半年に1回など定期的に実施し、次の期に何を伸ばすかを上司と部下で決める場として使います。

面談の流れ上司がすること
1. 本人の振り返りを聞く部下の自己評価と、その理由を先に聞く
2. 評価と理由を伝える評価項目ごとに、具体的な事実とデータをもとに結果を伝える
3. よかった点と課題を整理する続けてほしい行動と、改善してほしい点を1つずつ挙げる
4. 次の期の目標を決める次の等級に上がる条件と本人のキャリアの希望を照らし合わせ、目標と上司のサポートの内容を決める

表6 評価面談の進め方

評価する上司には、評価者研修で基準の読み方を合わせておきます。1つの印象で全体を高く(低く)つけてしまう、差がつかないよう中央に寄せてしまう、といった評価のくせは、評価者どうしで同じ事例を採点して比べると気づきやすくなります。部下の育成の進め方は管理職の育成方法でも書いています。

人事評価制度についてよくある質問

社員が何人くらいになったら、人事評価制度が必要ですか。

人数で決まりはありませんが、経営者が全員の仕事を直接見られなくなったときが導入を検討する目安です。社員10名前後でも、等級ごとの役割と評価項目を決めておくと、社員が増えたときに同じ基準で採用と育成を進められます。

人事評価制度をつくるのに、どのくらいの期間がかかりますか。

会社の規模や、経営計画がすでにあるかどうかで変わります。Bay3が案内している6か月の進め方の例では、1〜4か月目に経営計画とKPI、週報、会議を整え、5か月目に評価制度を設計し、6か月目に見直しと次の計画を立てます。評価制度の設計そのものは1か月ですが、その前の4か月で、評価の材料になる目標と週報の数字をそろえます。設計では、週報のデータを評価に使い、給与と賞与につなげます。

評価項目は、全社員で同じにしたほうがよいですか。

会社として大事にする価値観と行動は全社員に共通の項目にし、成果と能力の項目は職種と等級ごとに分けるのが一般的です。全員が同じ項目だと、営業職と事務職のように仕事が違う社員を同じ物差しで比べることになり、評価に納得が得られにくくなります。

評価の結果に部下が不満を持ったときは、どうすればよいですか。

不満への対応は、まず理由を最後まで聞き、評価の根拠にした事実を一緒に確かめるところから始めます。事実の認識が違っていれば評価を見直し、基準の理解が違っていれば、次の期の目標を決めるときに基準を具体的な行動の言葉で伝え直します。

まとめ:人事評価制度は、等級・評価・報酬をつなげて、運用できる重さでつくります

人事評価制度は、社員の成果と行動を決めた基準で評価し、処遇と育成に反映する仕組みです。等級・評価・報酬の3つの制度をセットで考え、経営計画の目標を評価項目につなげると、社員にとって納得できる制度になります。まずは次の3つから始めてください。

  • いまの給与と昇給の決め方を書き出し、社員に説明できない部分を洗い出す
  • 一般社員・リーダー・管理職など、等級ごとに期待する役割を1行ずつ書く
  • 経営計画の今期の目標から、部署と個人の評価項目に入れる数字を選ぶ
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Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
WRITER
三浦 一晃(Bay3株式会社 代表取締役)

はま寿司で12店舗・1,000名以上のマネジメントを経験し、株式会社識学で組織コンサルタントとして34社、カスタマーサクセスとして42社を担当。2025年にBay3を設立し、中小企業と歯科医院の経営計画・評価制度づくりを支援しています。著書『評価制度が歯科医院の未来を決める』。

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