最終更新日:2026年10月29日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
等級制度は、社員に任せる仕事と判断の範囲を段階に分けて書き出し、評価と給与を決めるときの共通の物差しにする仕組みです。社員10〜100名程度の中小企業で作るなら、期待する役割の大きさで段階(レベル)を分ける役割等級を選び、一般社員を含めた今の役職の段階に新人の段階を1つ足した数から始めると、社内で実際に起きている役割の違いと等級の数がずれにくくなります。作る順番は、目的を決め、今の仕事と役割を棚卸しし、等級の数と基準を決め、評価と給与につなぎ、今の社員を当てはめて試算してから説明する、という流れです。
等級ごとの基準を評価の点数まで落とし込む作業を手元で試したいなら、無料で配布している評価シート テンプレート(Excel)を開いておくと、後半の表5に出てくる点数とランクの関係を実物で見ながら読み進められ、自社の等級ごとの評価項目を書き込む練習にもなります。
社長が感覚で決めてきた給与は、社員が20人、30人と増えるにつれて、1人ひとりの差を言葉で説明しきれなくなります。「同じ勤続5年なのに、なぜあの人のほうが高いのか」と聞かれてその場で答えられないとき、足りないのは評価の項目より手前にある「この会社では、どの段階の人に何を期待しているのか」という定義です。等級制度はその定義を紙に書いて社内で共有する作業なので、立派な制度の資料を作るより、社長と幹部が同じ言葉で社員の段階を話せる状態を先に目指し、社員の納得はそのあとの説明で積み上げます。
- 今の組織図(誰が誰の上司か、部門ごとに何人いるか)
- 社員ごとの担当の仕事と、今の基本給の一覧
- 今期の経営計画で決めた重点施策
- 評価シートがあれば、今使っている評価項目
等級制度は、社員に期待する役割を段階に分けて評価と給与の土台にする仕組みです
等級制度で決めるのは「この段階の社員には、どんな仕事と判断を任せるか」で、評価と給与はこの段階を基準にして決まります。人事制度は等級・評価・報酬の3つの柱でできていると説明されることが多く、等級はその中でいちばん下に敷く土台の役割を持ちます。等級が無いまま評価シートを作ると、新人と管理職に同じ評価項目が並び、管理職は部下のマネジメントに時間を使っても点数が上がらない、という問題が起きます。3つの制度がそれぞれ何を決め、社員からはどう見えるのかを並べると、表1のようになります。
| 制度 | 決めること | 社員から見える問い | 見直しの目安 |
|---|---|---|---|
| 等級制度 | 段階ごとの役割、任せる仕事、判断の範囲 | 自分はいまどの段階にいて、次に何ができればよいか | 組織や事業が大きく変わったとき |
| 評価制度 | 期間中の成果と行動、能力の伸び | 今期は期待にどこまで届いたか | 年1回、項目を入れ替える |
| 報酬制度 | 等級ごとの給与の範囲、昇給と賞与の決め方 | 評価の結果で給与がどう変わるか | 年1回、昇給の時期に |
表1 等級・評価・報酬の3つの制度が決めること
表1のうち、等級制度だけが「期間の成績」を見ない点が他の2つとの違いです。評価は半年や1年の成果と行動を測りますが、等級はもっと長期で見た役割の段階を表すので、1回の評価が良かっただけでは上がりません。この違いを社内で共有しておくと、「今期の評価は高かったのに、なぜ昇格しないのか」という不満に、等級の基準のどこがまだ届いていないかで具体的に答えられます。社員にとっては、次の段階で何ができればよいかが見えることで、自分のキャリアパスを思い描けるようになります。
等級と役職は分けて決めると、ポストが空くのを待たずに昇格できます
等級は社員の役割の段階、役職は組織図の上の課長や部長といったポジションで、両方を同じものとして扱うと運用が窮屈になります。たとえば「課長=4等級」と決めてしまうと、課長のポストが空かない限り誰も4等級に上がれず、力のある社員ほど先が見えずに辞めていきます。等級と役職の関係は、「課長は4等級以上の社員から選ぶ」のように役職に就ける等級の下限だけを決めておく形にすると、ポストの数に縛られずに昇格を運用できます。
等級表には「4等級:部門の目標に責任を持ち、部下を評価する」と役割を書き、役職の欄には「課長・マネージャーに就ける」とだけ書きます。組織の変更で役職の数が減ったときは、まず役職手当だけを外し、等級は次の昇格・降格の判定まで据え置いて、その間に任せる役割を決め直すと、社員の処遇を急に下げずに済みます。
中小企業の等級制度は、職能等級より役割等級で作ると運用しやすくなります
等級の分け方には職能・職務・役割の3種類があり、1人が何役も兼ねる中小企業では、期待する役割の大きさで分ける役割等級がいちばん扱いやすい形です。職能等級は能力の段階で、職務等級は担当する職務(ポスト)ごとに分ける方法で、どちらも大企業で長く使われてきました。ただ、能力は目に見えないので評価者によって判定が割れやすく、職務等級は職務ごとの記述書を細かく作って更新し続ける手間がかかります。3つの特徴とメリット・デメリットを並べると、表2のようになります。
| 種類 | 何で段階を分けるか | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 職能等級(職能資格制度) | 仕事をこなす能力・知識・スキルの段階 | 異動しても等級が変わらず、長く勤める人を育成しやすい | 能力の見極めが曖昧になりやすく、勤続年数で上がって人件費がふくらみがち |
| 職務等級 | 担当する職務の中身と難しさ | 仕事と給与の対応がはっきりし、専門の人材を採用するときに給与を示しやすい | 職務記述書の作成と更新の手間が大きく、兼務の多い会社では書ききれない |
| 役割等級 | 期待する役割と責任の大きさ | 仕事の中身が変わっても役割で処遇でき、経営の方針とつなげやすい | 役割の定義が曖昧だと、職能等級と変わらない運用になる |
表2 等級制度の3つの種類の特徴と、メリット・デメリット
役割等級をすすめるのは、中小企業では1人の社員が営業と事務を兼ねたり、毎年のように受け持ちが変わったりするのがふつうだからです。職務等級ではそのたびに記述書を書き直すことになり、職能等級では「この人の能力は3等級か4等級か」を評価者の感覚で判断することになります。役割等級なら、今の課題に合わせて「班をまとめて後輩に教える」「部門の数字に責任を持つ」のように、任せている役割で段階を書けるので、社長と管理職が同じ言葉で判断できます。どの種類を選んでも、段階ごとの違いを言葉で書く作業は残るので、種類の選び方で手間が減るわけではない点には注意が必要です。
- 職能等級が合う会社:長期の雇用と社内での育成を重視し、異動や配置換えが多い
- 職務等級が合う会社:専門職の採用が中心で、職務の中身が何年も変わらない
- 役割等級が合う会社:兼務が多く、事業の変化に合わせて役割を柔軟に変えたい
等級制度が必要になるのは、社長が全員の処遇を1人で決めきれなくなったときです
等級制度を作る時期は人数だけで決めず、社長が社員全員の仕事ぶりを直接見て給与を決めるやり方が回らなくなったかどうかで判断します。大企業なら人事の担当部署が受け持つ制度づくりも、中小企業では社長が1人で背負っていることが多く、社長の目が届く範囲を超えたところで処遇のずれが表に出てくるからです。たとえば部門の責任者を置いて部下の評価を任せた途端、部門ごとに昇給の基準がばらばらになり、異動した社員が「前の部署のほうが上がりやすかった」と言い出す、といった状況です。図1の右側に当てはまるものがあれば、等級制度の構築を検討する時期に来ています。
- 社長が全員と毎週、仕事の話をしている
- 役職が社長と社員の2つの階層しかない
- 給与の差を、社長が1人ずつ理由をつけて説明できる
- 社長と社員の間に、リーダーや部門長がいる
- 中途採用の給与を決めるたびに、既存の社員との差で迷う
- 「何をすれば給与が上がるのか」と聞かれて答えられない
- 辞めた社員の理由に「先が見えない」が出てくる
図1 等級制度がまだ要らない状態と、作り始めたほうがよい状態
図1の左側に当てはまる会社でも、等級制度の手前にある準備は今のうちから始められます。社員ごとの受け持ちの仕事と、本人に任せている判断の範囲を役割分担表にまとめておけば、それが等級の基準を書くときの下書きになります。とくに中途採用を増やしていく予定がある会社は、採用の前に段階を決めておくと、入社する人に「どの等級で迎え、何ができれば次に上がるか」を最初の面談で示せます。等級が無いまま採用した人の給与を後から等級に当てはめると、既存の社員との差を調整する手間が大きくなります。
等級制度は、目的の決定から社員への説明まで6つの手順で作ります
等級制度は「目的→棚卸し→種類と数→基準書→評価と給与→試算と説明」の順に作り、前の手順が決まるまで次に進まないと手戻りが減ります。等級の数から先に決めたくなりますが、目的と今の仕事の棚卸しが済んでいないと、何段階に分ければ違いを書き分けられるのかの根拠がありません。手順の全体は図2のとおりです。かかる期間は打ち合わせの回数と今ある書類の量で変わるので、経営者と幹部の打ち合わせの日を先に設定し、手順ごとに決めたことを紙に残しながら進めます。
- 目的と方針を決める:処遇を公平にするのか、社員を育てるのか、採用で給与を示せるようにするのか。経営者と幹部で、いちばんの目的を1つに絞ります。
- 今の仕事と役割を棚卸しする:組織図に誰が誰の上司かを書き、社員ごとの担当の業務と、上司に聞かずに決めている判断を書き出します。
- 等級の種類と数を決める:役割等級を基本に、今の役職の段階を見て等級の数を仮に置きます。
- 等級ごとの基準を書く:等級基準書に、任せる仕事・決めてよい範囲・見る数字を書きます。
- 評価と給与につなぐ:等級ごとの評価項目と、給与の範囲と号俸の上げ下げを決めます。
- 今の社員で試算し、説明してから始める:全員を新しい等級に当てはめて給与を比べ、社員への説明会を開いてから運用を始めます。
図2 等級制度を作る6つのステップ
1つ目の手順で目的を絞るのは、目的によって等級の基準に何を書くかが変わるからです。処遇の公平を重視するなら成果と責任の大きさを、育成を重視するならできる仕事の段階を、基準の中心に置きます。2つ目の棚卸しでは、まず誰が誰の上司かを組織図にします。Bay3の組織図テンプレート(Excel)を活用すると、代表者・部門責任者・部門ごとのメンバーを書くだけで人数が自動で集計されるので、部門ごとの階層と人数を押さえてから、担当の業務と判断を書き足していけます。部門の分け方や役職の置き方から組織図を組み立てる手順は、組織図の作り方の記事で順に解説しています。
等級の数は、一般社員を含む今の役職の段階に新人を1つ足した数が目安です
等級の数は、多すぎると隣どうしの違いを言葉で書き分けられず、少なすぎると次の段階まで何年もかかって昇格のモチベーションが続かなくなります。役職の無い一般社員も1つの段階として今の段階を数え、その下に「手順書を見ながら仕事を覚える段階」を1つ足すと、等級ごとの役割の違いを無理なく書き分けられます。表3は、営業・業務・管理の部門があり、社長の下に部長と課長、リーダーを置いている社員30人ほどの会社をイメージした5等級の例です。
| 等級 | 段階の呼び方 | 任せる役割 | 就ける役職 |
|---|---|---|---|
| 1等級 | 新人 | 手順書を見ながら、担当の仕事を上司の確認つきで進める | — |
| 2等級 | 一人前 | 担当の仕事を1人で期限までに終え、改善を提案する | — |
| 3等級 | リーダー | 3〜5人の班をまとめ、後輩に仕事を教える | 主任・リーダー |
| 4等級 | 課長 | 部門の目標の数字に責任を持ち、部下を評価する | 課長・マネージャー |
| 5等級 | 部長 | 複数の部門か会社の重点施策を任され、経営の判断に加わる | 部長・部門長 |
表3 社員30人ほどの会社の等級の例(役割等級・5段階)
表3の3等級と4等級の境目は、「自分とメンバーの仕事」から「部門の数字と部下の評価」へと責任の範囲が変わるところで、等級制度の中でいちばん大きな段差になります。人数が増えて同じ等級の中の幅が広がってきたら、等級を増やす前に、1つの等級を前半と後半に分けて号俸で差をつけると、等級表を作り直さずに済みます。等級の数は一度決めたら社員の格付けに関わるので、導入後に減らすのは難しく、迷ったら少ないほうから始めるのが安全です。
等級基準書には、任せる仕事・決めてよい範囲・見る数字の3つを書きます
等級ごとの定義を明確にするときは、「主体的に行動できる」「高い専門性を持つ」のような言葉で書かず、任せる仕事を遂行できるか・決めてよい範囲・見る数字の3つの要件に分けて書くと、評価者によって読み方が割れません。要件は全職種に共通する書き方を1つ決め、そこに営業や現場職など職種ごとの具体例を添える形にすると、等級基準書が職種の数だけふくらむのを防げます。表4は、表3の3等級(リーダー)を現場の部門で書いた例です。
| 要件 | 書く内容 | 現場の部門での例 |
|---|---|---|
| 任せる仕事 | この等級の社員が1人で担当する業務 | 班の1週間の作業の割り振り、新人への作業の指導 |
| 決めてよい範囲 | 上司に聞かずに決めてよいこと | 班の中の担当の入れ替え、決められた金額までの備品の購入 |
| 見る数字 | 毎週の会議で報告する数字 | 班の作業の期限の達成率、手直しの件数 |
| 次の等級への条件 | 昇格を検討するときの条件 | 評価ランクA以上が2回続き、課長の代わりに部門の会議を回した経験がある |
表4 等級基準書の書き方の例(3等級・リーダー、現場の部門)
表4の4つの要件のうち、社長に相談が集中する状態をほどくうえでいちばん効くのは「決めてよい範囲」です。等級ごとに決めてよいことを書いておけば、リーダーは備品の購入や担当の入れ替えを自分で決められるようになり、社長は部門をまたぐ判断に時間を使えます。「見る数字」は経営計画の四半期の目標から部門に下ろした数字を入れ、等級が上がるほど見る数字の範囲が個人から班、部門へと広がるように書くと、等級と経営の目標が1本の線でつながります。
専門職のコースは、管理職にならない社員が増えてから足します
複線型の人事制度(コース別の人事制度)は、管理職にならずに専門の知識と技術で会社に貢献する人を、管理職と同じ高さの等級まで上げられるようにする仕組みです。技術者や資格職が多い会社では、管理職のポストが少ないために優秀な専門職が昇格できず、辞めてしまう問題への対応として使われます。ただし最初からコースを分けると、等級基準書が2倍に増えて運用の負担が重くなるので、表3のような1本の等級で始めるのが基本です。
3等級(リーダー)の社員のうち、部下を持たずに専門の仕事を続けたい人が何人いるかを数えます。数人に増え、その人たちの処遇を管理職と比べて説明できなくなったときが、4等級より上に専門職の段階を足す時期です。足すときは、管理職の4等級と専門職の4等級の給与の範囲をそろえ、どちらを選んでも損をしない形にします。
毎期の評価は号俸を動かし、等級は数期分の評価と役割の条件で上げ下げします
毎期の評価は等級の中の号俸(給与の段)を上げ下げし、等級そのものは数期分の評価と次の等級の条件を見て上げる、と役割を分けると、昇給と昇格が混ざりません。1回の評価で等級まで動かすと、たまたま大きな契約が取れた期に昇格し、次の期から上の等級の役割を果たせない、という事態が起きるからです。Bay3の評価シート テンプレートでは、評価項目の合計点(10〜0点)を11段階のランクに置き換え、ランクごとに号俸をいくつ上げ下げするかを決めており、その対応を抜き出したのが表5です。
| 合計点 | 評価ランク | 号俸の上げ下げ |
|---|---|---|
| 10点 | SS | +5 |
| 9点 | S+ | +4 |
| 8点 | S | +3 |
| 7点 | A+ | +2 |
| 6点 | A(目標どおり) | +1 |
| 5点 | B | ±0 |
| 4〜0点 | C・C-・D・D-・E | -1〜-5 |
表5 Bay3の評価シート テンプレートの点数基準(合計点・評価ランク・号俸)
表5では、すべての項目で目標どおりの数字を出すと6点のAになり、号俸が1つ上がります。目標を超えた期は超えた幅に応じて号俸が2〜5つ上がり、届かなかった期は据え置きか下がるので、同じ等級の中でも成果の差が給与に反映されます。評価で号俸を下げる場合は、その基準を賃金規程に書いておくことが前提になります。号俸1つあたりの金額は等級ごとに決め、上の等級ほど1号俸の金額を大きくすると、等級を上げることが給与のアップにつながり、スキルの向上に取り組む理由にもなります。号俸1つの金額と、等級ごとの給与の幅をどう設計するかについては、給与テーブルの作り方の記事に計算の例があります。
昇格と降格の条件は、評価ランクと次の等級の役割で決めておきます
昇格の条件は「評価ランクがA以上で2期続いた」のような評価の条件と、「次の等級の役割を代わりに務めた経験がある」のような役割の条件を組み合わせて決めます。評価の条件だけだと、今の等級の仕事はよくできても次の等級の役割が務まらない人を上げてしまい、本人にとっても重荷になるからです。降格は、評価ランクが低い期が続いたときに上司と本人で面談を重ね、改善の目標を決めても届かなかった場合に検討する、という順番を等級基準書に書いておきます。昇格と降格の判定のプロセスは、年1回、決まった時期にまとめて行う形にすると、上司ごとの判断のばらつきを社長と幹部の会議でそろえられます。
- 昇格:評価の条件(ランクと期数)と、役割の条件(次の等級の仕事の経験)の両方を満たす
- 降格:低い評価が続いたら面談で改善の目標を決め、それでも届かなかったときに判定する
- 判定の時期:年1回、経営者と幹部の会議で全員分をまとめて決める
等級を導入する前に、今の社員を当てはめて給与のシミュレーションをします
等級基準書と給与の範囲ができたら、運用を始める前に、今いる社員全員を新しい等級に当てはめて、今の給与が等級の範囲に収まるかを1人ずつ照らし合わせます。範囲から上にはみ出す人、下に外れる人が何人いて、合計の人件費がいくら変わるかを先に計算しておかないと、導入した月に給与の問題が一気に表に出るからです。試算の結果を見て、等級の範囲を調整するか、個別の移行のルールで対応するかを決めます。
新しい等級の範囲より今の給与が高い社員がいても、導入した時点で給与を下げると、制度そのものへの信頼を失います。差額を調整給として残し、評価の結果に応じて数年かけて範囲の中に収めていく、といった移行のルールを決めておきます。給与の引き下げには労働条件の変更の手続きが関わるので、就業規則や賃金規程の改定とあわせて、社会保険労務士に相談してから進めると安全です。
評価制度をまだ給与につないでいない会社なら、等級と評価だけを先に動かし、等級ごとの基準が社内で共有されたあとで給与と結びつける進め方もあります。評価の基準が上司どうしでそろうまでは評価の結果を給与に反映させず、上司と部下の目線合わせに使うので、試算で見つかった給与のずれもその間に調整できます。
評価項目4つに目標・ウェイト・0〜10点の基準を入れると、合計点と評価ランク、号俸の上げ下げまで自動で出ます。表3・表4で決めた等級ごとの役割を、評価項目と点数の基準に置き換えて使えます。
テンプレートを受け取る三浦が評価制度の構築と運用を支援した広告代理店では、同じ時期に採用の戦略も見直し、部署ごとに必要な人数と配置を決め直しました。支援先からは、人員を適切に配置できるようになり、社員どうしの目線がそろってすばやく判断できる会社に変わった、とうかがっています。年商は評価制度を入れてから1年半でおよそ2.7倍になりましたが、この倍率には市場の動きや支援以外の取り組みの影響も含まれます。評価制度を作る作業と、どの役割に何人を置くかを決める作業を、同じ時期に並べて進めた例です。
等級制度は、社員への説明と年1回の見直しを続けると形骸化を防げます
等級制度が形骸化するのは、作った基準が社員に伝わっていないか、事業が変わったのに基準が昔のままになっているときで、導入時の説明と年1回の見直しを年間の予定に入れておくと、どちらも起きにくくなります。社員から見て「自分の等級も、上がるための条件も知らない」状態では、等級は給与を決めるための社長の内部資料にとどまり、社員が次に何をすればよいかを知る手がかりにはならず、成長やモチベーションを支える機能を果たしません。導入のときは、全社員に向けて等級の段階と昇格の条件を説明する場を実施し、そのあと上司と部下の1対1の面談で、本人が今どの等級にいて、次の等級に上がるには何が足りないかを伝えます。期の初めから翌期の準備までの1年の運用の流れを、図3にまとめました。
図3 等級制度を運用する1年の流れ
年1回の見直しでは、経営計画で翌年の重点を決めた直後に、等級基準書の「見る数字」と「任せる仕事」が今の事業に合っているかを点検します。人数の少ない会社ほど、評価にかかる上司の手間が重くなりすぎると制度ごと止まってしまうので、面談の回数や基準の細かさは会社の規模に合わせて決め、無理なく継続できる形を選びます。評価制度が途中で止まった経験のある会社は、評価者の負担が重かったのか、給与とつながっていなかったのか、人数に対して制度が重すぎたのか、止まった理由を先に確かめてから作り直します。見直しの場で点検したい項目を、次に4つ挙げます。
- 社員全員が、自分の等級と次の等級に上がる条件を言える
- 同じ等級の社員の間で、任せている仕事の重さに大きな差が無い
- 今年の重点施策が、どこかの等級の「見る数字」に入っている
- 昇格や降格の判定で、上司ごとの判断のばらつきが話し合われている
3つの制度を一度に作り直す場合の進め方は人事評価制度の作り方で、等級によって評価項目の重みを変える例は人事評価の評価項目の例の記事で読めます。Bay3が等級表・評価表・給与テーブルを一緒に作る支援の内容は、サービス紹介の評価制度の項目で紹介しています。
パート・等級表の公開・中途採用の等級は、仕事の中身と任せる役割で決めます
パートや契約社員にも、正社員と同じ等級制度を使いますか。
正社員と同じ等級表を使う必要はありませんが、仕事の中身と責任、異動や配置換えの範囲の違いに照らして待遇の差が不合理でないこと、社員に求められたら差の理由を説明できることが必要です。パートタイム・有期雇用労働法は2021年4月から中小企業にも全面的に適用されており、同一労働同一賃金のガイドラインも2026年10月1日に改正版が適用されています。パートや契約社員向けには段階を2〜3つに絞った等級を作り、正社員の等級と仕事の中身をどう対応させるかを書いておくと、説明を求められたときに答えられます。
作った等級表は、社員全員に公開したほうがよいですか。
等級の段階、それぞれの役割、昇格の条件は全社員に公開します。上がり方が見えない等級は、社員にとってキャリアの目標になりません。公開しないのは、誰がどの等級にいるかと、一人ひとりの給与の額です。
中途採用の人は、どの等級で迎えればよいですか。
前職の役職や年収で決めず、入社後に任せる役割が表3のどの段階に当たるかで決めます。迷うときは1つ下の等級で迎え、入社から半年後の評価で上げる条件を採用の時点で本人に伝えておくと、既存の社員との公平を保ちながら、本人も入社後の目標をイメージしやすくなります。
今の組織図と給与の一覧を見ながら、何段階に分けるか、等級ごとに何を任せるか、今の社員を当てはめたときにどこで給与のずれが出そうかを、三浦が一緒に整理します。相談はZoomを使ったオンラインで、全国どこからでも60分お受けしています。まだ評価制度が無い会社でも、等級から作る順番をお伝えできます。
無料相談を申し込むBay3の支援内容をもとに構成し、編集部が作成しています。
出典・参考:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」