最終更新日:2026年10月10日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
KPIは、売上や利益といった最終の目標に向かう途中で、仕事が順調に進んでいるかを測る数字です。営業なら商談の件数と受注率、人事なら応募数と内定の承諾率、製造なら不良率と設備の稼働率が、よく使われる例です。
この記事では、社員10〜100名程度の会社の経営者とリーダーに向けて、部署・業種ごとのKPIの具体例と、自社に合うKPIを3〜5つに絞って決める手順、決めたあとに毎週の会議で運用する方法をまとめました。
今期の目標から四半期のKPIまでを1つのファイルで決めたい方は、Bay3が無料で配っている中長期経営計画テンプレート(Excel)を使うと、記入例を見ながら埋められます。
- KPIの意味と、KGI・KSF・OKRとの違い
- 営業・マーケティングのKPIの例と、売上を分解するKPIツリー
- 人事・事務・製造・店舗・歯科医院のKPIの例
- KPIをKGIから逆算して決める手順と、SMARTの法則
- KPIが機能しなくなる原因と、毎週の会議での運用のしかた
KPIとは、最終の目標に向かう途中の進み具合を測る数字です
KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では重要業績評価指標と訳されます。売上や利益のように決算まで結果が分からない目標だけを見ていると、途中で手を打てません。そこで、最終の目標につながる行動や成果を数値にして、毎週・毎月の状況を測定します。KPIを置く目的は、次の2つです。
- 目標に対する進捗を、決算の前に把握する
- 数字が止まっている段階を見つけ、課題の解決に向けた打ち手を早く決める
図1 KGIから毎週の行動までの関係
KGIはゴール、KSFは達成のカギ、KPIはその進み具合を見る数字です
| 用語 | 意味 | 営業部門の例 |
|---|---|---|
| KGI(Key Goal Indicator) | 最終的に達成したい目標を数値にしたもの | 今期の売上1億2,000万円 |
| KSF(Key Success Factor) | 目標を達成するために欠かせない要素。KFSとも呼ぶ | 既存顧客からの紹介を増やす |
| KPI(Key Performance Indicator) | KSFが実行できているかを測る中間の数字 | 紹介による商談の件数(月20件) |
| OKR(Objectives and Key Results) | 挑戦的な目標と、その達成を測る成果指標を組み合わせる目標管理の手法 | O:新しい業界の顧客を開拓する/KR:四半期で新しい業界の商談15件・受注3件 |
表1 KGI・KSF・KPI・OKRの違い(数字は書き方の例です)
KGIが1つに対して、KPIは複数になります。KPIを決めるときは、先にKGIとKSFを決めてから、それを測る数字を選びます。
OKRは、届くか分からない高い目標を置き、6〜7割の達成でよしとする使い方が多い手法です。KPIは達成する前提の数字なので、毎週の会議で未達の打ち手を決める運用にはKPIが向きます。
KPIを決めると、目標までの途中で手を打てるようになります
| メリット | 中身 |
|---|---|
| 担当者が今週やることを自分で決められる | 「今週は商談を5件」のように、毎日何をすればよいかが分かる |
| 売上が足りないとき、どの段階の数字が足りないかが分かる | 目標までのプロセスが数字で可視化され、改善の手を早く打てる |
| 評価の基準をそろえられる | 上司の印象ではなく、実績の数字で個人のパフォーマンスと貢献を確かめられる |
| チームの判断が速くなる | 同じ数字を見て話すので、会議での意思決定に時間がかからない |
表2 KPIを設定するメリット
営業・マーケティングのKPIの例は、リードの数・商談の件数・受注率・平均単価です
営業とマーケティングのKPIは、売上を「件数×割合×単価」に分解し、担当者が動かせる数字を選びます。売上そのものは担当者がすぐに変えられないので、商談の件数や受注率のように、毎週の活動で変わる数字を置きます。
| 段階 | KPIの例 | 担当 |
|---|---|---|
| 見込み顧客の獲得 | 問い合わせの件数、資料のダウンロード数、展示会で獲得したリードの数 | マーケティング |
| 見込み顧客の育成 | メールの開封率、セミナーの参加者数、商談につながった割合 | マーケティング、インサイドセールス |
| 商談と受注 | 商談の件数、提案の件数、受注率(成約率)、平均の受注単価 | 営業 |
| 既存顧客との関係 | 継続の割合、解約率、追加の受注の件数、顧客1社あたりの売上 | 営業、カスタマーサクセス |
表3 営業・マーケティングのKPIの例
- マーケティングと営業で同じ顧客を扱う場合は、商談につながった割合のように、2つの部門の受け渡しを測る数字を置きます
- 広告やセミナーなどの施策ごとに、獲得したリードの数と費用を並べると、効果の高い施策が分かります
営業のKPIツリーは、売上を掛け算の要素に分けて書きます
KPIツリーは、KGIを掛け算や足し算で分けられる要素に分解し、木の形に並べた図です。新規の売上なら、次のように分けます。
図2 新規の売上を分解したKPIツリーの例(数字は書き方の例です)
ツリーにすると、売上が足りないときに、リードが少ないのか、受注率が下がっているのか、単価が低いのかを分けて分析できます。たとえば図2の数字なら、受注率を25%から30%に向上させても、商談を40件から48件に増やしても、受注は12件になり、売上は160万円増えます。商談を8件増やすには、商談につながる割合が20%のままならリードが40件多く要ります。同じ効果を出すのに、どちらが自社で実現しやすいかを比べて、力を入れるKPIを決めます。顧客管理のツールを使っている会社は、件数のデータをそこから出せるようにしておくと集計が楽になります。使っていなければ、担当者が週報に件数を入れるだけで足ります。重なりや漏れがないよう、同じ段の要素は、掛けるか足すと1つ上の数字になるように書きます。
人事・事務・製造・店舗のKPIの例は、応募数・ミスの件数・不良率・客単価などです
人事や事務のように売上を直接つくらない部門は、業務の量・速さ・質を件数と割合で表します。数値化しにくいと言われる仕事でも、処理の件数、締め日の遅れ、ミスの件数なら数えられます。製造業や店舗のように売上をつくる現場は、生産量や客単価と、不良率やリピートの割合を組で置きます。定着率や在庫の日数のように月単位でしか出ない数字は月次の振り返りで見て、週報には応募数や処理の件数のように毎週動く数字を置きます。
経営者が会社全体で見るKPIは、営業利益率、社員1人あたりの売上、労働分配率(粗利に占める人件費の割合)、1年以内に辞めた人の数です。Bay3の中長期経営計画テンプレートでは、売上・売上総利益・人件費・営業利益・社員数を入れると、営業利益率・1人あたり売上・労働分配率が自動で出ます。
| 部門・業界 | KPIの例 |
|---|---|
| 人事(採用・育成) | 応募数、面接の設定率、内定の承諾率、入社後3か月の定着率、研修の受講率 |
| 事務・経理 | 請求書の発行の遅れ件数、月次決算の締めにかかった日数、処理のミスの件数、残業時間 |
| 製造業 | 生産量、不良率、設備の稼働率、納期を守れた割合、在庫の日数 |
| 店舗・小売・サービス業 | 来店数、購入した人の割合、客単価、リピートの割合、スタッフ1人あたりの売上 |
| システム開発 | リリースの回数、不具合の件数、問い合わせへの回答までの時間 |
| 飲食店 | 客数、客単価、人時売上高(売上÷スタッフの総労働時間)、食材費と人件費の割合 |
| 建設・工務店 | 受注の件数、工事ごとの粗利率、工期を守れた割合、手直しの件数 |
| 介護 | 利用者の稼働率、新しい利用の相談件数、職員の退職者数 |
| 不動産 | 反響の件数、内見の件数、成約率 |
表4 部門・業界ごとのKPIの例
- 製造業のように品質と効率の両方を見る部門は、不良率と生産量のように、片方だけを追うと他方が下がる数字を組で置きます
- 人事のKPIは、応募数だけでなく定着率まで置くと、採用した人が辞めていく状態に気づけます
歯科医院のKPIは、院長・歯科衛生士・受付で見る数字を分けて置きます
| 見たいこと | KPIの例 | 主に見る人 |
|---|---|---|
| 新しい患者さんの数 | 月の新患数、ホームページ経由の予約の件数 | 院長、受付 |
| 通い続けてもらえているか | 定期検診(リコール)の来院率、治療の中断の件数 | 歯科衛生士 |
| 予約が埋まっているか | キャンセル率、ユニット1台あたりの予約の数 | 受付 |
| 診療の中身 | 自費診療の割合、衛生士1人あたりの担当患者数 | 院長、歯科医師 |
表5 歯科医院のKPIの例(内容は書き方の例です)
Bay3が支援した歯科医院では、院内のルールと組織図とあわせて、役職ごとの役割と見る数字を決め、Googleスプレッドシートの週報と月曜朝15分の会議も導入しました。役職ごとに見る数字を分けると、院長がすべての数字を1人で追わずに済みます。役割の分け方は歯科医院の組織マネジメントで書いています。
KPIは、KGIから逆算して担当者が動かせる数字を3〜5つに絞って決めます
KPIは、KGIを決め、達成のカギとなるプロセスを洗い出してから、担当者が動かせる数字を選んで決めます。他社の事例をそのまま使うと、自社の戦略や業界の環境と合わない数字を追うことになります。
- KGIを決める:今期の売上・利益・人数など、最終の目標を数値と期限で決めます。3年後の姿からの決め方は中長期経営計画の立て方で書いています。
- KSFを洗い出す:目標を達成するために欠かせないプロセスを、現状の分析から選びます。
- KPIの候補を出す:KSFごとに、毎週測定できる数字の候補を書き出します。
- 3〜5つに絞る:会社全体で追う数字を、担当者が自分の行動で動かせて週報で確かめられるものに絞ります。
- 目標値と担当を決める:KPIごとに目標の数値と担当者を1人決め、四半期ごとに見直します。
Bay3では、3年計画、年間目標、四半期のKPI、毎週の行動、評価、給与の順につなげて設計します。KPIは毎週の週報や会議で確かめられる数字にします。決算まで分からない数字だけでは、途中で手を打てないためです。Bay3の中長期経営計画テンプレートでも、今期の重点施策は多くても5つにし、1つの施策に担当者1人とKPI1つを置く形にしています。目標値の決め方や、中長期経営計画からKPIへ落とし込むまでの細かい手順は、KPIの設定方法で書いています。
候補の中から残す数字は、次の条件で選びます。
- 担当者が自分の行動で動かせる
- 毎週、週報で実績を入力できる
- KGIの達成とどう関係するかを、担当者が理解している
決めたKPIは、SMARTの法則で確かめます
| SMART | 確かめること | 直し方の例 |
|---|---|---|
| Specific(具体的) | 何の数字か、誰が読んでも同じに分かるか | 「営業をがんばる」を「新規の商談の件数」にする |
| Measurable(測定できる) | 毎週、数字で測れるか | 「顧客の満足」を「解約の件数」で測る |
| Achievable(達成できる) | 現実的に届く目標値か | 前年の3倍を、実績から見て届く数字に下げる |
| Relevant(関係がある) | KGIの達成とつながっているか | 「訪問回数」を「受注につながる提案の件数」に変える |
| Time-bound(期限がある) | いつまでの数字か決まっているか | 「商談20件」を「10月末までに商談20件」にする |
表6 SMARTの法則でKPIを確かめる
理念と3年後の姿、3か年の数値計画、今期の重点施策、四半期のKPI(目標と実績・達成率)、月次の振り返りのシートが入っています。シートごとに記入例があるので、KGIからKPIまでを順に埋められます。
テンプレートを受け取るKPIは、数が多すぎたり、担当者が動かせない数字だったりすると機能しません
KPIが機能しなくなるのは、数が多すぎる、担当者が動かせない、部門ごとにばらばら、見直していない、のいずれかの状態のときです。KPIを決めたのに成果が出ないときは、次の表で原因を確かめます。
| よくある状態 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| KPIが10個以上ある | どれを優先すればよいか分からず、どれも追わなくなる | KGIへの影響が大きいものを3〜5つ残す |
| 売上だけをKPIにしている | 担当者が毎週の行動で変えられず、月末まで手を打てない | 商談の件数や受注率など、行動で動く数字に分ける |
| 部門ごとに別々に決めている | それぞれの部門が自分の数字だけを最適にしようとし、マーケティングがリードの数だけを追って、営業が受注できない見込み顧客が増える | 部門の間の受け渡しの数字(商談につながった割合など)を置く |
| 決めたまま見直さない | 市場や事業が変わっても古い数字を追い続ける | 四半期ごとに、KGIとのつながりを確かめて修正する |
表7 KPIが機能しなくなる状態と直し方
KPIの選び方が有効かは、KPIを達成した月から、受注までにかかる期間(1〜3か月など)をおいて、KGIが伸びているかで確かめます。KPIを続けて達成しているのに、数か月たっても売上が伸びないなら、KPIの選び方を見直します。
たとえば商談の件数だけを評価すると、受注の見込みが低い商談まで数に入れるようになります。評価に使うKPIは、件数と受注率のように組で見ます。
KPIは、週報と月曜朝15分の会議で毎週確かめて運用します
KPIは、担当者が週報に実績を入れ、毎週の会議で届いていない数字の打ち手を決めて運用します。月に1回しか見ないと、未達に気づいたときには取り返す期間が残っていません。
Bay3が無料で配っている週報・週次ミーティングのフォーマット(Excel)では、担当ごとのKPIの目標と実績、達成率、今週やったこと、来週やることを1人1行で書き、リーダーがコメントを入れます。月曜朝の会議は15分で、次の順に進めます。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜3分 | 数字の確認(届いていないKPIだけ読み上げる) |
| 3〜10分 | 未達の原因と打ち手(担当者が1分で話す) |
| 10〜14分 | 「誰が・何を・いつまでに」を決めて記録する |
| 14〜15分 | 先週の決定の確認 |
表8 KPIを確かめる月曜朝15分の会議の進め方
- 司会は持ち回りにし、リーダーだけが話す会議にしない
- 今週やったことの報告は会議の前に週報で済ませ、会議で読み上げるのは届いていないKPIの数字だけにする
KPIの管理は、スプレッドシートの週報で始められます
社員10〜100名程度の会社なら、専用のツールを導入しなくても、GoogleスプレッドシートやExcelの週報を活用して管理できます。金曜の夕方までに各担当が実績を入力し、リーダーがコメントを書いてから月曜の会議に出ると、会議では報告を読み上げずに打ち手の話に時間を使えます。Bay3が6か月で進める支援の例では、2か月目に部署ごとのKPIを決めて誰がどの数字を見るかを組織図に書き込み、3か月目に週報の運用を始めます。
週報の項目を増やしすぎると、入力が負担になって続きません。KPIの実績と、今週やったこと・来週やることを短く書くだけにし、詳しい話は会議で聞きます。会議の時間の使い方は中小企業の会議の改善でも書いています。
これまでに支援した人材紹介会社では、管理職研修と週次のKPIミーティングの導入を行いました。数字で動く会議の形ができ、現場が自分で改善を回すようになっています。この会社の売上は約3倍です(数字は支援先からうかがったもので、業績の変化には市場や支援以外の取り組みの影響も含まれます)。
KPIの例についてよくある質問
KPIはいくつ設定するのがよいですか。
適切な数は、会社全体で追うKPIを3〜5つにするのが目安です。担当者1人が毎週追う数字は1〜2つにすると、何に時間を使えばよいかがはっきりします。数が増えたら、KGIへの影響が小さいものから外します。
数値化しにくい仕事には、どんなKPIを置けばよいですか。
仕事の「量・速さ・質」のどれかを数えます。たとえば総務なら、問い合わせへの回答までの時間、手続きの遅れの件数、手順書を更新した件数などです。最初から完璧な指標でなくても、毎週数えられる数字を置き、運用しながら修正します。
新規事業でも売上をKPIにしてよいですか。
立ち上げの段階では売上が小さく、週ごとの変化が読み取れないことが多いので、試してもらった顧客の数や継続して使っている割合など、売上より手前の数字をKPIにします。事業が伸びてきたら、売上と利益の数字に切り替えます。
KPIを人事評価に使ってもよいですか。
使えます。Bay3では、週報に入力したKPIの実績を評価に使い、給与と賞与につなげる順で設計します。ただし達成率だけで点を決めると、数字をつくるための行動が増えるので、件数と受注率のように組で見るか、そこに至る行動の評価と組み合わせます。最初は目線合わせとして評価だけを運用し、基準がそろってから給与に連動させる進め方もあります。評価の項目と給与のつなげ方は人事評価制度の作り方で書いています。
まとめ:KPIは自社のKGIから逆算し、毎週の会議で確かめます
他社の例は候補を出すときの参考にとどめ、自社のKGIから逆算して、担当者が動かせる数字を選びます。まずは次の3つから始めてください。
- 今期の売上・利益などのKGIを1つ決め、件数・割合・単価に分解する
- 会社全体で追うKPIを3〜5つに絞り、1つのKPIに担当者を1人決める(担当者1人が毎週追う数字は1〜2つまで)
- 週報に実績を入力し、月曜朝の15分の会議で届いていない数字の打ち手を決める
いまの目標と部署ごとの数字の見方をうかがいながら、KGIからKPIへの分け方と、毎週の会議での運用のしかたをお伝えします。オンライン(Zoom)で60分です。
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