最終更新日:2026年10月10日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
1on1を始めてみたものの、部下に「最近どう?」と聞くと「特にないです」と返ってきて、10分で終わってしまう。結局、仕事の進捗の報告を聞くだけの時間になっている。この記事は、そうした1on1を立て直したい管理職と経営者に向けて書いています。
1on1で話すことは、部下の状態・仕事の悩み・目標・キャリア・会社の方針という決まったテーマの中から、部下が選びます。この記事では、1on1の目的と評価面談との違い、テーマ一覧と質問例、30分の進め方、「話すことがない」と言われたときの対応をまとめました。
部下が辞めやすい職場になっていないかを先に確かめたい方は、Bay3が無料で配っている離職の兆しチェックリスト(PDF)が使えます。経営者や管理職が20項目に答える書式で、1on1で何を聞くかを決める手がかりになります。
- 1on1の目的と、評価面談との違い
- 1on1で話すテーマの一覧と、テーマごとの質問例
- 新人・中堅・ベテランで変える話題の比重
- 30分の1on1の進め方と、事前の準備
- 1on1が業務報告や雑談で終わる原因と、直し方
1on1は、部下の話を中心に、成長と悩みの解決を支援するための定期的な面談です
1on1(1on1ミーティング)は、上司と部下が1対1で定期的に対話し、部下の成長と悩みの解決を支援する面談です。頻度と時間は会社ごとに決め、話すテーマは部下が中心になって決めます。従業員の定着やモチベーションの向上を目的に導入するなら、半年ごとに退職者数と1on1の実施率を見て、効果を確かめます。
上司にとっては、普段の会話や会議では見えない部下の状況を把握し、信頼関係を構築する機会になります。1on1の目的は、次の4つに整理できます。
| 目的 | 1on1でやること |
|---|---|
| 部下の成長を支援する | 仕事のやり方や身につけたいスキルを一緒に考え、次に取り組むことを決める |
| 部下の状態を把握する | 体調やモチベーション、仕事への熱意(エンゲージメント)の変化に、早いうちに気づく |
| 信頼関係をつくる | 本音で相談できる関係を、毎回のコミュニケーションの積み重ねでつくる |
| 会社の方針を共有する | 会社やチームの方針と、部下の仕事の関係を説明し、意見を聞く |
表1 1on1の目的
1on1を続けると、次のようなメリットがあります。
- 上司と部下が相互に考え方や背景を理解し、普段の仕事の相談がしやすくなる
- 部下が悩みを早めに話すきっかけになり、問題が大きくなる前に対応できる
- 上司が部下に期待していることを個人ごとに伝えられ、部下の強みを仕事に活用しやすくなる
1on1は部下が話したいことを話す場、評価面談は上司が評価の結果を伝える場です
| くらべる点 | 1on1 | 評価面談 |
|---|---|---|
| 目的 | 部下の成長と悩みの解決を支援する | 評価の結果と理由を伝え、次の期の目標を設定する |
| 頻度 | 週1回〜月1回 | 半年に1回など、評価の時期 |
| 話す中心の人 | 部下 | 上司(部下の自己評価を聞いてから、結果と理由を伝える) |
| テーマ | 部下が話したいこと | 評価項目ごとの結果 |
表2 1on1と評価面談の違い
1on1を評価の場と受け取られると、部下は弱みや失敗を話さなくなります。最初の1on1で、「この時間は評価の場ではありません。あなたが話したいことを話す30分です」と部下に伝えておきます。歯科医院の評価面談の進め方は、歯科医院の人事評価面談のフィードバック方法で書いています。
1on1で話すテーマは、近況と体調、仕事の悩み、目標、キャリア、会社の方針から選びます
1on1で話すテーマは、決まった一覧を部下と共有しておき、毎回その中から部下が話したいものを選びます。テーマが明確になっていないと、上司も部下も何を話せばよいか分からず、業務の報告で時間が埋まります。
| テーマ | 話すこと | 質問の例 |
|---|---|---|
| 近況・雑談 | 部下が話したい近況(週末の出来事など)や趣味、最近気になったこと | 「最近、仕事以外でいちばん楽しかったのはどんなことですか」 |
| 体調・メンタル | 心身の健康、睡眠、仕事の量のバランス | 「この1か月で、疲れが抜けにくかったのはどんなときでしたか」 |
| 仕事の悩み・業務の課題 | いま困っていること、やりにくい手順、チームの問題 | 「いまの仕事で、いちばん時間がかかっているのはどこですか」 |
| 目標への手応え | 今期の目標の現状と、達成に向けて足りないこと | 「目標まで、あと何があれば届きそうですか」 |
| キャリア・将来 | キャリアプラン、3年後にやっていたい仕事と、それを実現するために伸ばしたい能力 | 「3年後、どんな仕事を任されていたいですか」 |
| 会社の方針・チーム | 会社の戦略やチームの方向への意見、改善の提案 | 「チームのやり方を1つ変えられるとしたら、何を変えますか」 |
表3 1on1で話すテーマ一覧と質問の例
- プライベートの話題は、部下が自分から話す範囲にとどめます。家族のこと、結婚や出産の予定、病気の詳しい中身は、部下が話さない限り上司からは聞きません
- 体調とメンタルの話は、毎回最初の数分で確かめます。変化があれば、ほかのテーマより先に扱います。ハラスメントの申告や、眠れない・食欲がないといった不調が続いている話は、上司ひとりで抱えず、本人にそう伝えたうえで経営者や人事、産業医につなぎます。産業医がいない会社は、地域産業保健センターに相談できます
新人とは仕事の悩みと体調、中堅とは目標とキャリア、ベテランとはチームの課題を多めに話します
| 部下 | 多めに話すテーマ | 上司の姿勢 |
|---|---|---|
| 入社1年目までの新人 | 仕事の悩み、職場の人間関係、体調 | 小さな不安を早めに聞き、仕事の進め方を具体的に伝える |
| 入社2〜5年目の中堅 | 目標への手応え、スキルアップしたい分野、キャリア | 本人の考えを先に聞き、任せる仕事の幅を一緒に決める |
| ベテラン・リーダー | 会社のビジョンと方針、チームの課題、後輩の育成 | 意見を求め、経営の考えと現場のずれを聞き取る |
表4 部下の経験ごとのテーマの比重
1on1の質問は「はい・いいえ」で終わらない聞き方にし、上司は聞き役に回ります
1on1の質問は、「何」「どこ」「どんな」を入れて、部下が自分の言葉で自由に答えられる聞き方にします。「問題はないですか」と聞くと、「ないです」の一言で話が終わってしまいます。
| 終わってしまう聞き方 | 話が広がる聞き方 |
|---|---|
| 「仕事は順調ですか」 | 「今週の仕事で、うまくいったことと、引っかかったことは何ですか」 |
| 「困っていることはありますか」 | 「いまの仕事で、もっと早く終わらせたい作業はどれですか」 |
| 「やる気はありますか」 | 「最近の仕事で、やりがいを感じたのはどんな場面でしたか」 |
| 「将来のことは考えていますか」 | 「この会社で、次に挑戦してみたい仕事は何ですか」 |
表5 1on1の質問の言いかえの例
歯科医院のスタッフとの面談で使える質問は、歯科スタッフ面談のコツと質問リストにまとめています。
上司は聞き役に回り、自分の経験は短く開示します
1on1は部下が話す場です。上司が意識したいコツは次のとおりです。
- 部下の話を途中で遮らず、最後まで聞く(傾聴)。答えをすぐに出さず、「あなたはどうしたいですか」と聞き返す
- 上司が自分の失敗や迷った経験を短く話す(自己開示)と、部下も話しやすい雰囲気になる
- 会議室など、周りに話を聞かれない環境を用意する
- 聞いた話はメモに残し、次の1on1で「前回の件はどうなりましたか」と続きから聞く
離職の兆しチェックリストで印が多かった分野を、1on1で部下に聞きます
Bay3の離職の兆しチェックリストは、人が辞めやすい職場に共通する状態を、「評価と給与」「上司との関係と役割」「仕事の量と進め方」「将来の見通し」の4分野・20項目で確かめる書式です。経営者や管理職が、自社について答えます。印が多かった分野は、部下がテーマを持ってこなかった回に上司から出す話題の候補になります。たとえば「何を頑張れば評価されるのか分からない」という声に印がついたら、1on1で「いまの評価で、何を頑張れば上がると思っていますか」と聞きます。
図1 離職の兆しチェックリストの4分野
評価と給与、上司との関係と役割、仕事の量と進め方、将来の見通しの4分野・20項目に答えると、合計の点数で兆しの強さが分かります。分野ごとに最初にやることも書いてあります。管理職や社員にも答えてもらい、経営者の答えと比べる使い方もできます。
チェックリストを受け取る1on1の30分は、近況、部下のテーマ、次の行動の順に進め、最後の2分で記録します
1on1は、近況の確認、部下が選んだテーマ、次の行動の決定の順に進め、決めたことを記録して終わります。話しっぱなしで終わると、部下は「話しても何も変わらない」と感じます。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜5分 | 近況と体調の確認。前回決めたことの進み具合を聞く |
| 5〜22分 | 部下が選んだテーマを話す。上司は質問と傾聴を中心にする |
| 22〜28分 | 次の1on1までに部下がやること、上司がサポートすることを決める |
| 28〜30分 | 決めたことを1on1シートに記録し、部下と共有する |
表6 30分の1on1の進め方
時間を効率よく使うための準備として、部下には前日までに話したいテーマを1つ選んでもらいます。上司は前回の記録を読み返し、部下の目標の進捗や最近の様子を確かめておきます。
1on1シートの欄は、「話したテーマ」「決めたこと(誰が・何を・いつまでに)」「次回に聞くこと」の3つで十分です。欄を増やすと記録が負担になり、1on1そのものが続かなくなります。記録は部下と上司の2人で共有し、人事やほかの社員に伝えるときは本人の同意を得ます。ただし、ハラスメントの申告や心身の不調が続いている話は、表3の下に書いたとおり経営者や人事につなぎます。
1on1が業務報告や雑談で終わるときは、進捗を週報に移し、毎回次の行動を1つ決めます
1on1が形だけになるのは、何のために話すのかが上司と部下で共有されていないときです。人事や人材育成の施策として導入するときは、導入の前に、目的とテーマ一覧、進め方を全社でそろえておくと、管理職ごとのばらつきが減ります。
| よくある失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 業務の報告で終わる | 進捗の確認だけになり、部下の悩みやキャリアの話が出ない | 数字の進み具合の報告は週報と週次の会議に移し、1on1では目標に届かない理由や本人の困りごとを話す |
| 上司が話しすぎる | 指導や説教の時間になり、部下が本音を話さなくなる | 上司の助言は、部下が自分の考えを話し終えてから、2〜3分で伝える |
| 雑談だけで終わる | 関係は良くなっても、次に何をするかが決まらない | 最後の数分で、次にやることを毎回1つ決める |
| 忙しいときに中止する | 部下が「自分の話は後回しでよい」と受け取る | 中止せず、15分に短くしてでも実施する |
表7 1on1のよくある失敗と直し方
1on1が有効に使えているかは、記録に「決めたこと」が毎回残っているかで確かめます。
- 部下が話す時間のほうが長い
- 前回決めたことの続きから始まる
- 最後に次の行動が1つ決まり、記録に残る
- 進捗の報告と上司の指導で時間が埋まる
- 毎回テーマが違い、前回とつながらない
- 話しっぱなしで、何も決まらない
図2 続く1on1と形だけの1on1
部下に「話すことがない」と言われたら、上司がテーマを2つ用意します
「話すことがない」と言われたら、その要因が、何を話せばよいか分からないことか、上司に話しにくいことかを見分けます。分からないだけなら、上司がテーマ一覧から2つ選び、「今日はこのどちらかの話をしませんか」と提案します。部下は選ぶだけで話し始められます。話しにくそうなら、前回の1on1で頼まれたことを上司が先に片づけ、その報告から始めます。
部下が1on1で話した失敗や弱み、転職を考えたことがあるといった話は、評価や処遇の判断に使いません。評価は、週報の実績と評価面談で確かめた事実をもとに決めます。
仕事の数字は週報と週次の会議で扱い、1on1は部下の悩みとキャリアに使います
仕事の数字と打ち手は週次の会議で扱い、1on1では部下の悩み・成長・キャリアの話に時間を使います。会議と1on1の役割が分かれていないと、1on1が進捗の確認の場になり、本来の目的が果たせません。
| 場 | 話すこと | 形の例 |
|---|---|---|
| 週報 | 担当ごとのKPIの目標と実績、今週やったこと、来週やること | Bay3のフォーマットでは、金曜の夕方までに各担当が入力し、リーダーがコメントする |
| 週次の会議 | 届いていない数字の原因と打ち手 | Bay3のフォーマットでは、月曜朝15分。誰が・何を・いつまでにを決める |
| 1on1 | 部下の悩み、成長、キャリア、職場への意見 | 月1回30分を下限に、部下の人数から逆算して決める |
表8 週報・週次の会議・1on1の役割の分け方
Bay3は評価制度をつくるとき、評価する側の手間が増えすぎて止まらないよう、評価項目の数や面談の回数を会社の規模に合わせて決めています。1on1の回数も、管理職が使える時間から逆算します。部下が8人いる管理職が毎週30分の1on1をすると、それだけで月に16時間ほどかかります。続かないと感じたら隔週や月1回に減らし、決めた回数を守ります。会議そのものの直し方は中小企業の会議の改善で書いています。部下を抱えながら自分も現場の仕事をしている管理職は、プレイングマネージャーの限界もあわせて読んでください。管理職の育て方全体は管理職の育成方法で書いています。
Bay3の支援事例のうち、IT企業(年商数十億円規模)では、評価制度の構築、全社員向けの研修、週次会議の支援を同時に進めました。組織全体で改善を続ける仕組みが根づきました。この会社の売上は約1.2倍です(数字は支援先からうかがったもので、業績の変化には市場や支援以外の取り組みの影響も含まれます)。
1on1で話すことについてよくある質問
1on1の頻度と時間は、どのくらいがよいですか。
適切な頻度は部下によって違いますが、月1回30分を下限にし、部下の状況に合わせて隔週や毎週に増やします。Bay3の離職の兆しチェックリストでも、「上司と部下が1対1で話す時間が、月に1回もない」ことを兆しの1つにしています。新人や、異動・昇格の直後の部下とは、最初の3か月だけ毎週にする方法もあります。15分しか取れない回は、近況の確認を1〜2分にして、部下が選んだテーマと次の行動だけを話します。
部下の側は、1on1で何を話せばよいですか。
テーマ一覧から1つ選び、「いま困っていること」「上司に決めてほしいこと」「やってみたいこと」のどれかを1つ持っていけば十分です。上司は、部下が話を用意しやすいよう、前日にテーマを聞いておきます。
1on1はオンラインでもよいですか。
オンラインでも実施できます。表情が読み取りにくいので、最初の近況の確認を少し長めに取り、カメラをオンにして話します。体調やメンタルの話は、対面のほうが変化に気づきやすいので、ときどき対面の回を入れます。
1on1で部下から転職の相談をされたら、どう対応しますか。
まず理由を最後まで聞き、評価や給与、仕事の量、将来の見通しのどこに不満や不安があるのかを確かめます。社内で解決できることなら一緒に方法を考え、すぐに答えられないことは、いつまでに返事をするかを伝えます。給与や異動のように上司だけで決められないケースは、その場で約束しません。誰にどこまで話してよいかを本人に確かめてから、経営者や人事と相談します。
まとめ:1on1で話すことはテーマ一覧から部下が選び、次の行動を決めて終わります
1on1は、部下の話を中心に、成長と悩みの解決を支援する面談です。話すことに困らないためには、テーマ一覧を部下と共有し、進め方と記録の形を決めておきます。まずは次の3つから始めてください。
- 近況と体調、仕事の悩み、目標、キャリア、会社の方針のテーマ一覧を部下に渡す
- 30分の進め方を決め、最後に次の行動を1つ決めて記録する
- 進捗の報告は週報と週次の会議に移し、1on1を部下の話に使う
離職の兆しチェックリストの結果や、いまの会議と面談のやり方をうかがい、何から手をつけるかの優先順位をお伝えします。オンライン(Zoom)で30分です。
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