最終更新日:2026年11月6日 | 執筆:Bay3株式会社 代表取締役 三浦一晃
業務マニュアルは、作る業務を1つに絞り、読む人と目的を決めてから、手順ごとに「迷ったときにどう判断するか」と「なぜそうするか」を書き添えて作ります。書き上げたら新しく担当する人に一度使ってもらい、つまずいた箇所を直してから社内に公開します。手順だけを並べたマニュアルは、例外が起きた場面で役に立たず、結局ベテランに聞きに行く流れに戻ってしまうからです。
社員10〜100名程度の会社では、マニュアル作りだけを任せられる社員を置く余裕が無いことも多いはずです。普段の仕事の合間に現場のリーダーが書くことになるので、最初から全部の業務をそろえようとすると途中で止まります。どの業務から作るか、誰が読んで何ができればよいか、誰がいつまでに書くか、公開したあと誰が直すか、の4つを先に決めておけば、専任の担当者がいない会社でも1本目は無理なく仕上がります。以下の例は、社員30人前後の会社を想定しています。
どの業務から手をつけるかを一緒に決めたい場合は、60分の無料相談でも承っています。
- どの業務のマニュアルか(最初は1つに絞る)
- 誰が読み、読んだあと何ができればよいか
- 誰が書き、いつまでに完成させるか
- 公開したあと、誰がいつ見直すか
業務マニュアルとは、業務の目的・手順・判断の基準を1つにまとめた社内の文書です
業務マニュアルは、ある仕事を誰が担当しても同じ品質で進められるように、その仕事の目的と流れ、手順、迷ったときの判断の基準をまとめた文書です。よく似た言葉に手順書がありますが、手順書は1つの作業の操作の順番を書いたもので、業務マニュアルはその手順書をいくつも含む、一段上の範囲を扱います。たとえば「受注から請求まで」の業務マニュアルの中に、「見積書の作り方」や「請求書の発行の操作」といった手順書が入る関係です。違いを整理すると表1のようになり、自社でいま必要なのがどちらかを最初に決めておくと、書く範囲がぶれません。
| 文書 | 書く範囲 | 主な中身 | 例 |
|---|---|---|---|
| 業務マニュアル | 1つの業務の始まりから終わりまで | 目的、全体の流れ、担当者、手順、判断の基準、トラブルの対応 | 受注から請求までの業務 |
| 手順書 | 1つの作業 | 操作の順番、画面や道具の使い方 | 請求書の発行システムの操作 |
| 社内規程・ルール | 会社全体 | 守るべき決まり、禁止事項 | 経費精算の規程、情報の扱い |
表1 業務マニュアル・手順書・社内規程の違い
マニュアルにはほかにも、システムの使い方をまとめた操作マニュアルや、新入社員の研修に使う教育マニュアル、事故や災害のときの危機管理マニュアルといった種類があります。中小企業がまず整えるべきなのは、毎日の仕事の品質と引き継ぎに直接かかわる業務マニュアルのほうで、操作マニュアルは必要になった箇所から業務マニュアルの中に手順書として足していけば間に合います。会計や販売管理のシステムなら、提供している会社がPDFや画面の説明書を用意していることが多いので、自社で一から書く部分は思ったより少なく済みます。人材育成のための教育マニュアルも、業務マニュアルができてから、その中の手順を研修の順番に並べ直せば作れます。
業務マニュアルを作る目的は、仕事の品質をそろえ、教える時間と属人化を減らすことです
マニュアルの効果がいちばん大きく出る場面は、新人や異動してきた人に仕事を教えるときです。口頭で教えると、教える人によって手順やコツの説明が少しずつ違い、同じ業務でも担当者ごとに品質がばらつきます。マニュアルがあれば、教える側は手順の説明を省いて「なぜそうするのか」や現場の工夫の話に時間を使えるので、指導の時間そのものが短くなります。もう1つのメリットは、特定の人しかできない仕事、いわゆる属人化した業務を減らせることで、担当者が休んだり辞めたりしても業務が止まりにくくなります。ベテランの頭の中にあったスキルやコツが文書として社内で共有されるので、新人が先輩に聞かずに1件を終えられるようになるまでの期間も縮まります。
同じ質問が毎週ベテランに集まり、その人の手が止まります。ミスが起きても「前の担当者はこうしていた」という話しか残らず、原因が分からないまま同じミスが発生します。マニュアルがあっても古いまま更新されていないと、社員は読むのをやめて人に聞くようになり、作った手間が無駄になります。担当者が急に辞めるリスクに備えが無く、引き継ぎの資料が何も無いまま、残った人が手探りで業務を回すことになります。
最初に作るのは、時間がかかり担当者が1人しかいない業務のマニュアルです
最初の1本には、毎月の作業時間が長く、しかもその業務を回せる人が社内に1人しかいない業務を選びます。この2つが重なる業務は、担当者が休んだときに止まる損失が大きく、マニュアルを作った効果がすぐに見えるからです。逆に、年に1回しか発生しない作業や、すでに3人以上が問題なくこなしている作業は、後回しにしても困りません。候補を出すときは、各部署のリーダーに毎週か毎月くり返している仕事を挙げてもらい、1件あたりの所要時間と月の件数、その仕事を任せられる人の数を一覧にすると、比べる材料がそろいます。
挙げてもらう仕事は「見積書を作る」「月末に請求書を出す」くらいの、マニュアル1本のテーマになる大きさにそろえておくと、横に並べて比べやすくなります。Bay3の生成AI 業務の棚卸しシートは、業務ごとに1回の時間と月の回数を入れると月の時間が自動で計算されるので、この一覧づくりにそのまま活用できます。シートには生成AIで減らせる見込みを入れる列もありますが、マニュアルの対象を選ぶ段階では空けたままでかまいません。社員30人の会社を想定した架空の例で並べると、表2のようになります。
| 業務(例) | 1回の時間 | 月の回数 | 月の時間 | できる人 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 見積書を作る | 60分 | 20回 | 20時間 | 1人 | 最初に作る |
| 月末の請求書を発行する | 30分 | 30回 | 15時間 | 1人 | 2本目に作る |
| 会議の議事録をまとめる | 45分 | 12回 | 9時間 | 4人 | 書式をそろえるだけでよい |
| 年1回の棚卸しの集計 | 8時間 | 年1回 | 月40分ほど | 2人 | 後回し |
表2 マニュアルを作る業務の選び方(社員30人の会社を想定した架空の例)
表2の例では、月20時間かかって担当が1人しかいない見積書の作成を1本目に選び、請求書の発行を2本目に回します。議事録は書ける人が4人いるので、マニュアルを作るより書式のフォーマットを1つに統一するほうが早く品質がそろいます。部署全体の仕事を漏れなく洗い出したいときは業務の棚卸しのやり方を、1人に仕事が集まってしまう原因から手を打ちたいときは属人化の解消方法を参考にしてください。
業務マニュアルは7つの手順で作り、書き始める前に読む人と完成日を決めます
本文を書くのは7つのうち5番目で、その前に目的・読む人・担当者・完成日・業務の流れを決めておきます。いきなり本文から書き始めると、書く人が知っていることを思いついた順に並べることになり、新人には全体像がつかめない文書になりがちです。読む人や完成日といった基本的な要素を先に決めておけば、作成者と上司が「どこまで書けば完成か」のイメージで食い違いません。7つのステップは図1のとおりで、1本目のマニュアルなら2〜3週間で完成させる計画が現実的です。
- 目的と読む人を決める:誰が読み、読んだあと何ができればよいかを1文で書きます。
- 担当者と完成日を決める:書く人を1人に決め、完成日と途中の確認日をカレンダーに入れます。
- 業務の流れを洗い出す:いまの担当者にヒアリングし、始まりから終わりまでを図にします。
- 構成と見出しを決める:流れの図をもとに目次を作り、1つの見出しに1つの作業を入れます。
- 本文を書く:手順に、判断の基準と理由、よくあるミスを添えます。
- 新しい担当者に使ってもらう:マニュアルだけを見て業務をしてもらい、止まった箇所を直します。
- 公開して置き場所を決める:保存先を1か所にし、見直す人と見直す日を書き込みます。
図1 業務マニュアルを作る7つの手順
目的と読む人は、「誰が・読んだあと何をできるようになるか」の1文で決めます
目的を「業務を標準化するため」のような言葉で書くと、どこまで詳しく書けばよいかが決まりません。「入社3か月以内の営業担当が、先輩に聞かずに見積書を作って上司に出せるようになる」のように、読んだあとの行動を具体的な目標の形で書けば、読み手の知識のレベルと、マニュアルの終わりの地点がはっきりします。読む人が社内の用語をどこまで知っているかも、この段階で考慮しておくと、本文で専門用語の説明が要るかどうかを判断できます。対象者が新人と経験者の両方にまたがる場合は、新人に合わせて書き、経験者は見出しだけ拾い読みすれば済む構成にします。
担当者は1人に決め、完成日と途中の確認日をスケジュールに入れます
「みんなで少しずつ書こう」と決めて担当者を置かないと、誰の仕事でもなくなり、マニュアル作りは途中で止まりがちです。書く人を1人に決め、その人の通常業務から週に2〜3時間をマニュアルのために空けると、作業が前に進みます。複数の部署にまたがる業務でも、まとめ役は1人にして、ほかのメンバーには自分の担当部分の確認だけを頼む形を選択すると、責任があいまいになりません。完成日だけでなく、流れの図ができる日、本文の下書きができる日といった途中の確認日も決め、上司がその日に中身を見る段取りにしておくと、締め切り直前にまとめて書く状況を防げます。書く人は、その業務をいちばんよく知るベテランより、2〜3年目くらいで業務を覚えたばかりの社員のほうが、新人がつまずく箇所を覚えていて適していることもあります。
業務の流れは、いまの担当者へのヒアリングで洗い出して1枚の図にします
本文を書く前に、業務の始まりと終わり、その間の作業、作業ごとの担当者を1枚の業務フローの図にまとめます。ヒアリングでは「何をしていますか」と聞くより、直近の1件のデータを一緒に画面で見ながら「この次に何をしましたか」とたどるほうが、本人も忘れていた細かい作業が出てきます。聞き取った業務内容を図に起こすと、担当者の頭の中にしか無かった流れが可視化され、上司が知らなかった作業が出てくることもあります。図にするときは、作業を箱に、判断が分かれる場面をひし形にして、「金額が50万円を超えるか」のような分かれ道を目立たせておきます。このひし形の箇所が、あとで本文に判断の基準を書くべき場所になります。
構成は流れの図をもとに目次を作り、1つの見出しに1つの作業を入れます
構成を決めるときは、流れの図の箱をそのまま時系列に並べて見出しにすると、読む人が業務の全体像と今いる位置を見失いません。冒頭にはマニュアルのタイトルとテーマ、3行ほどの概要、対象者、業務の全体の流れの図、使う道具とファイルの保存場所を置き、そのあとに作業ごとの見出しを続けます。1つの見出しに2つ以上の作業を入れると、更新するときにどこを直せばよいかが分かりにくくなります。最後に、よくある質問とトラブルの対応、更新の記録を入れる欄を用意しておくと、運用を始めたあとに追加する情報の置き場所に困りません。
使われるマニュアルは、手順ごとに判断の基準と理由まで書いてあります
読まれ続けるマニュアルには、例外が起きた場面での判断の基準と、その理由が書いてあります。手順は何度か経験すれば覚えてしまうので、慣れた社員はマニュアルを開かなくなります。それでも開くのは、いつもと違う依頼が来た、金額が大きい、期限に間に合わないといった、判断に迷う場面です。その場面の答えがマニュアルに無ければ、社員はベテランに聞きに行き、マニュアルは「新人が最初に読むだけの資料」になってしまいます。利用者が自分で問題を解決できるかどうかは、手順の詳しさより、この判断の部分がどれだけ書いてあるかで決まります。
- 操作の順番だけが並んでいる
- 「適切に対応する」「確認する」で終わる
- 例外のときの連絡先が書いていない
- 最後に直した日が分からない
- 手順ごとに判断の基準と理由がある
- 「何を見て、どうなればよいか」まで書いてある
- 迷ったら誰に聞くかが決まっている
- 更新日と見直す人が書いてある
見積書の作成を例に、1つの手順をどう書くかを表3に示します。左から2列目までが一般的な手順書の中身で、右の3列が判断の基準と理由、よくあるミスです。この3列があるだけで、新人は「値引きしてよいか」を毎回上司に聞く必要がなくなり、上司のほうも基準を外れた案件だけを見ればよくなります。
| 手順 | やること | 判断の基準 | 理由 | よくあるミス |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 前回の見積書を顧客名で探して開く | 1年以上前の見積書なら単価表を使う | 材料費が変わっていることが多い | 古い単価のまま出す |
| 2 | 値引きの額を決める | 5%までは担当が決めてよい。超える場合は課長に相談 | 利益率を下回る案件を防ぐ | 口頭の約束だけで値引きする |
| 3 | 上司に確認を依頼する | 合計が50万円を超えるときだけ依頼する | 確認の待ち時間を減らす | 全件を依頼して返信が遅れる |
表3 判断の基準まで書いた手順の例(見積書の作成。金額と率は架空)
判断の基準を書くと、誰がどこまで決めてよいかが文書の上で見えるようになります。これまでの支援先の歯科医院(医療法人)の院長からは、次の言葉をいただいています。
「以前は院内の決定事項がすべて院長である僕のところへ相談に来ていたのですが、組織化されたことで各役職ごとに案が出て、上司がそれを修正し、質の高い状態で最終決定できるようになりました。スタッフたちの能力の高さにも日々気づかされます。」
マニュアルの「判断の基準」の列は、この役割分担を業務の単位まで細かくしたものだと考えています。誰が何を決めるかを部署や役職の単位で先に整理したい場合は、役割分担表の作り方から読むと、マニュアルに書く権限の線が引きやすくなります。
文章は5W1Hを意識して、1つの文に1つの動作だけを書きます
手順の文は、「いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どうやって」を省かずに書き、1つの文に1つの動作だけを入れます。「内容を確認して問題がなければ送付する」と書くと、確認の中身も問題の基準も読み手の判断に任されます。「宛名と金額と納期の3か所を見積依頼のメールと見比べ、すべて一致したら顧客に送る」と書けば、新人でも同じ動きができます。用語は社内で呼び方が分かれているものを1つに統一し、略語や専門用語は初めて出てくる箇所で一度だけ意味を説明すると、読み手の理解が止まりません。文末の表現も「〜します」にそろえ、守らないと事故やクレームにつながる注意点だけを、手順の前に置いて目立たせるのが効果的です。
- 1つの文に入れる動作は1つだけにする
- 「確認する」と書くときは、何と何を見比べるかまで書く
- 数字や期限は「早めに」ではなく「当日17時まで」と書く
- 同じものは最後まで同じ言葉で呼ぶ
図や画像は、文章では伝わりにくい画面の操作と業務の全体像にだけ使います
図や画像を使うと視覚的に分かりやすくなりますが、すべての手順に画面のコピーを貼ると、システムの画面が変わるたびに大量の画像を差し替えることになります。画像を入れるのは、ボタンの位置や入力欄のように文章で説明すると長くなる操作と、冒頭の業務フローの図くらいに絞ると、更新の負担が軽くなります。動画は手元の細かい動きを見せるのに便利な形式ですが、一部だけを直すのが難しいので、変更の少ない作業に限るほうが無難です。凝ったデザインは要らず、見出しの書き方や文字の大きさ、注意書きの色といったレイアウトの決まりをマニュアル全体でそろえておくほうが、読み手が慣れて探す時間が減ります。テキストだけで十分に伝わる手順には図表を足さない、と決めておくのも、更新を続けるための工夫です。
トラブルの対応は、起きたときに誰へ報告して何を記録するかまで書きます
よくあるトラブルとクレームの対応は、手順とは別の見出しにまとめておくと、困ったときに探しやすくなります。書く項目は、起きたことの例、最初にやること、報告する相手と期限、記録を残す場所の4つです。「顧客から金額の誤りを指摘されたら、その日のうちに課長へ報告し、訂正した見積書の版を案件のフォルダに保存する」と決めておけば、担当者が一人で抱え込んで対応が遅れることを防げます。対応した事例は、その都度マニュアルの事例の欄に追加していくと、ベテランの頭の中にあったノウハウが文書として蓄積されていきます。同じミスが2回続いた手順には、作業の最後に見るチェックリストを付けると、再発の防止に役立ちます。表3の見積書の例なら、次のような3行です。
- 宛名・金額・納期を依頼のメールと見比べた
- 値引きが5%を超える場合は課長の了承を得た
- 送った見積書を案件のフォルダに保存した
部署ごとの業務と1回の時間、月の回数を入れると月の時間が自動で出ます。マニュアルを先に作る業務を選ぶときにも、そのまま使えます。記入例つきです。
シートを受け取る作成ツールは、マニュアルを更新する人が使い慣れたものを選びます
ツールを選ぶ基準は機能の多さより、マニュアルを直す担当者がその場ですぐ書き換えられるかどうかです。マニュアルは作るより直す回数のほうがずっと多く、更新に手間のかかる形式を選ぶと、修正が後回しになって古い情報が残ります。社員30人前後の会社なら、すでに社内で使っているWordやExcel、Googleドキュメントから始めて、マニュアルの数が増えて探すのに困るようになった段階で、クラウド型のマニュアル作成ツールや社内Wikiの導入を検討する順番で十分です。ツールを選定するときは、現場の社員がパソコンとスマホのどちらで読むことが多いかという環境も確かめておきます。主な形式の向き不向きは表4のとおりです。
| 形式 | 向いているマニュアル | 気をつけること |
|---|---|---|
| Word・Googleドキュメント | 文章が中心の業務マニュアル | 版が増えないよう保存先を1か所にする |
| Excel・Googleスプレッドシート | 表3のように手順と判断の基準を表で並べるもの | スマホでは読みにくい |
| PowerPoint・Googleスライド | 画面の操作など、図や画像が多いもの | 文章を後から足しにくい |
| 動画 | 手元の動きを見せる作業 | 一部だけの修正が難しい |
| クラウド型の作成ツール・社内Wiki | マニュアルが数十本を超え、検索が必要になった会社 | 月額のコストと、全員が使える操作か |
表4 マニュアルの形式とツールの選び方
無料で配られているテンプレートを使うと、表紙や目次、更新の記録の欄といった枠を作る手間は省けます。ただ、テンプレートの項目を全部埋めようとすると、自社の業務に要らない欄まで書くことになるので、本文の構成は図1の手順で作った目次を優先し、テンプレートからは見た目の形式だけを借りるのがちょうどよい使い方です。紙に印刷したりPDFにしてメールで配ったりすると、手元に古い版が残り、どれが最新の版か分からなくなりやすい点にも気をつけます。配るときは保存先へのリンクだけを送り、印刷物には更新日を入れて、改訂のたびに差し替える担当を決めておくと効率的です。
公開したマニュアルは、見直す担当者と日付を決め、週1回の会議で直す点を拾います
マニュアルは1本ごとに見直す担当者を1人決め、半年に1回の見直し日を入れておくと古くなりません。完成した日がいちばん正しく、その後は業務のやり方やシステム、取引先の条件が変わるたびに、少しずつ現実とずれていきます。ずれに最初に気づくのは使っている現場の社員なので、気づいた人が書き込める欄か、決まった連絡の場があれば、修正の漏れはかなり減ります。手順6で新しい担当者に試しに業務を実施してもらったときに直した箇所も、更新の記録の最初の1行として残しておきます。
図2 マニュアルを公開してから更新するまでの流れ
図2の3つ目と4つ目は、毎週の定例会議に組み込むと回しやすくなります。週報に「マニュアルどおりにいかなかったこと」の一行を足しておき、会議でその一行が出たら、誰がいつまでにマニュアルのどこを直すかをその場で決めます。現場からのフィードバックを毎週少しずつ直しておけば、半年ごとの見直しは、直した箇所が今も合っているかを確かめるだけで済みます。会議の時間割と週報の書き方は週次ミーティングの進め方にまとめています。更新したら、冒頭の更新の記録に日付と直した箇所、理由を一行で記載しておくと、次に読む人が何が変わったかをすぐに把握できます。
見直しの日には、手順が今のやり方と合っているかに加えて、そもそもその作業が要るのかも検討します。マニュアルを書いて業務の流れが見えるようになると、二重に入力している箇所や、誰も使っていない帳票が見つかることがあるからです。見つけた作業をやめたら、その手順をマニュアルからも消し、更新の記録に「廃止」と理由を書いておきます。こうした業務改善の結果まで反映していくと、マニュアルは継続的にブラッシュアップされ、仕事の品質の向上にもつながります。
三浦がこれまでに支援した歯科医院では、院内のルールと組織図、役職ごとの役割と見る数字を決め、あわせてGoogleスプレッドシートの週報と、月曜朝15分の週次ミーティングを始めました。週報はGoogleスプレッドシートで担当ごとの数字を入れ、月曜朝の15分の会議で見る形です。この記事で紹介した「マニュアルどおりにいかなかったこと」の一行も、こうした毎週の場があれば拾う先に困りません。
マニュアルを作る業務を選ぶところから、役割の整理、週報と会議の仕組みまでをまとめて整えたい会社には、Bay3の支援内容のページで進め方を紹介しています。業務マニュアルは仕組み化の一部なので、全体の進め方は仕組み化のやり方もあわせて読むと、どこから手をつけるかの順番が見えてきます。
業務マニュアルは、考える余地・生成AI・引き継ぎ・分量の4点も先に決めておきます
マニュアル化すると、社員が自分で考えなくなりませんか。
手順だけを細かく決めると、その心配は出てきます。判断の基準と理由を書いておけば、社員はマニュアルに無い場面でも理由から考えて動けるようになります。決まった作業はマニュアルに任せ、空いた時間を顧客への提案や改善に使ってもらう、という伝え方をすると受け入れられやすくなります。
生成AIでマニュアルの下書きを作ってもよいですか。
ヒアリングのメモや作業の録音を文字にしたものから、構成や文章の下書きを作るのには役立ちます。ただ、生成AIは自社の判断の基準を知らないので、表3の右側の列は担当者が書き、出てきた文章は担当者が読んで、事実と違う箇所を直してから使います。顧客の情報や社外秘の資料を入れてよいかは、使うサービスの設定と社内ルールを先に決めておきます。
退職が決まった社員の業務は、どうやってマニュアルにすればよいですか。
残りの出勤日が少ないときは、本人に一から書いてもらうより、後任が本人の横で業務を一緒に行い、後任がマニュアルを書いて本人に確認してもらう形のほうが早く仕上がります。本人にしか分からない判断の場面と、取引先ごとの例外だけは、最後の週までに聞き取っておきます。退職する人の個人的なやり方がそのまま残らないよう、後任と上司で中身を見直してから公開すると安心です。
1本のマニュアルは、どのくらいの分量が適切ですか。
決まった上限はありませんが、1つの業務で見出しが20を超えるようなら、業務を2つに分けたほうが更新しやすくなります。分量より、読む人が探している手順に目次から1回でたどり着けるかで判断します。
いまの業務の分担や組織図を見ながら、マニュアルを先に作る業務の選び方、判断の基準をどこまで書くか、更新を回す会議の組み方を、三浦が一緒に整理します。相談はZoomを使ったオンラインで、全国どこからでもお受けしています。
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